アンバランスな愛-10
「テクは必要無い……アンタにしか与えられない快楽を教えてやってくれ」
ゼインの言いたい事が分かったケイは、抱えていた頭をガシガシ掻いて顔を上げた。
「おう。任せろ!」
アメリアを愛する事に関しては誰にも負けない、と胸を張ったケイにゼインも顔を上げて笑顔を向ける。
「……そういや、カリーには?」
ケイの質問に、ゼインは笑っていた顔をひきつらせた。
「……まだ、会えてねぇ……」
たまにカリーの匂いがするので、居るのは居るのだが……追いかけようにも身体が動かない。
「相当、怒ってたもんなあ〜…前途多難だな」
「はぁ〜……」
ゼインはここ何日が吐き出し続けたため息を、再び盛大に吐き出すのだった。
それから2週間……やっと動けるようになったゼインは、カリー捜査に乗り出す。
自慢の鼻と耳を使ってカリーを追いかけるも、彼女は城内を縦横無尽に逃げ回った。
キャラの友人……という事で城内を自由に動けるゼインとカリーの追いかけっこは城内ですっかり有名になり、今ではカリーがいつ捕まるか賭けまで行われている。
「いやあ〜減俸の元取れたよ〜♪」
胴元はエンらしい。
「私は3日後に賭けてるんだからね。頼むよワンコ君」
ファン国王まで参加しているらしい。
「……わん……」
ゼインは息を切らし、情けない鳴き声を返すのだった。
動けるようになったゼインは、病室から兵士用の宿舎に移動した。
姫の友人をこんな所に……と言われたが、元奴隷なので客室の方は豪華過ぎて落ち着かないのだ。
どうやらカリーも同じ理由でメイド専用の部屋に居座っているらしい。
それでも一応個室を与えてもらったので充分ゆっくり出来る。
「あぁ〜…不毛……」
ゼインは疲弊しきった身体をベットに投げ出し、うつ伏せになって枕を頭の後ろから被せる。
元から追いかけっこでカリーに勝った事など一度も無いのだ。
ゼインが寝込んでいる間、城内を調べ尽くしたであろうカリーを捕まえるなど不可能なのかもしれない。
「よぉっ」
ベットで悶えていると、いきなり声がかかりゼインは飛び上がって驚いた。
「スラン!」
いつの間にか姿を眩ましていた筈のスランは、ヘラヘラしながら酒瓶を片手にベットに腰掛ける。
「湿気た顔してんなぁ……呑むか?」
「……呑む……」
酒は嫌いだし、呑んだらろくな事にならないので呑まないようにしているのだが……今は呑みたい気分。
スランは喉で笑うと、酒瓶をゼインに突き付け、ゼインは瓶に口をつけてそのまま呑んだ。