絶交、その後-1
松野はその後すぐに天馬学園高等部に転校して行きました。
父親が竹中と引き離すためにそうしたのです。
その結果私とも引き離されることになったのですが、私の場合は完全に切れた訳ではありません。
私は松野の父親に信頼されているので、出入りはできるのです。
けれども彼女を外に連れ出すことは許されませんでした。
ですから私の方でたまに会いに行き、話しをしたりするのです。
松野は天馬学園への通学にも行き帰り車で送迎されて監視の目が厳しくなっていました。
また、天馬学園の初等部にいた時のようにお嬢様スタイルに戻っていました。
彼女は竹中の情報を私から聞きたがっていましたが、私自身竹中にあまり会うことがなく、遠くから観察したことしか伝えられませんでした。
というのは、松野と会えなくなってからのしばらくの間は、私を誘って気紛らしをしていましたが、そのうち竹中は私とも会わないようになったのです。
その当時竹中は松野とのことをこう表現していました。
「俺は松野と絶交したことを思い出すと胸が痛む。
だけどそのことは心の傷になってはいるが、やがて傷がかさぶたになってポロリと剥がれ落ちる時が来ると思っている。
そうなったら、表面にはうっすらと白っぽい傷跡が残るだけになる。
もうそうなったら、それは淡い思い出だ。
淡いけれど心の奥の遠い景色だから前景に何が来ても邪魔にはならない。
俺はそんなときがやがて来ると思っているんだ」
そして彼の言う通り、松野とのことが遠い背景になったときに私からも離れるようになった。
彼にとって1対1という付き合いは窮屈なものだったのかもしれません。
けれども松野は私がわざと情報を伏せているのではないかと疑って、ときどき私をなじるようになりました。
だから私は自然に彼女から足が遠のいていったのです。