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杉山梢の独り言
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松野緑の策略-1

その間、松野緑は竹中に対して大得点を上げました。

高校2年の学年末試験で赤点を4科目も取って落第しそうになった竹中を救ったのです。

その詳細については説明を省きますが、松野はこの借りを竹中にどうやって返させようかと画策していたらしいのです。

3年生になってから松野は私に言いました。

「今度の土曜日、何か予定があるかな?」

日中コンビニのバイトがあるけど、夕方からは空いてるよ。

私は、またお招きかなと思ってそう言いました。

自宅へのお招きは竹中と友達になった後も私だけにしかしていなかったのです。

「実は竹中が僕に借りを返したがっているんだ。そのチャンスをやろうと思って。

私なりにサプライズを考えているんだけど、それは第三者がいるとできないことだから」

私は、なんとなく理解した。

つまり私が邪魔者だから、二人っきりにしてほしいということなんだなと。

じゃあ、もし竹中に誘われても、用事があるからと断れば良いのかい?

「そ……そうなの、実は! わかってくれてありがとう」

私は、嫌な予感がした。

彼女は竹中の誕生日以来、特に私に対抗心を燃やすようになっていたからです。

それ以前からそうなのですが、あのとき松野は竹中にはっきり聞いたのです。

「もし……竹中がだよ。

私たち2人のうちどっちかと結婚することになったらどっちとする?」

そのとき竹中はあくまでももしもの話しだと言って私を選んだのです。

その時は私は心の中で『勝った』と思いました。

でもその喜びを顔に出さないようにしました。

そのとき松野が顔を真っ赤にして口惜しがったので、慌てて竹中は彼女にも花を持たせる話をしてその場を収めたのです。

でも、松野はそれ以来少し私に対する態度がぎこちなくなりました。

そしてときどき私を牽制するようになりました。

「僕は、竹中を大事に思っているんだ。梢は他にも沢山友達がいるだろう?

だからたまには2人だけでつき合わせてくれないかなぁ」

もちろん私はそれは構わないよ、と言いました。

でも、いくらそういう提案を松野がしても、竹中は必ず私も一緒でなければ駄目だと主張するのでした。

それは私の予想通りだったので、私も安心していました。

ところが松野は今度は最終手段に出たのです。

借りを返させるという、竹中のウィークポイントを攻める作戦に出たのです。

正直私は不安でした。

そして、その土曜日が過ぎてしまいました。私は胸騒ぎで禄に眠れませんでした。

日曜日の昼ごろに私は松野に呼び出されて話を聞きました。

その内容はとてもショックでした。

松野は両親の留守中に竹中を泊まらせて関係を持ったというのです。

それが親にばれてしまい、一切の交際を禁じられたことも告げられました。

松野はなんという無茶なことをしたのでしょう。

そして何故そのことを私に告げたのでしょう?

どうやら竹中は彼女の女の罠に嵌ってしまったようなのです。

いえ、彼は罠だと知っていたに違いありません。

知っていてそれを受け入れたということは竹中も松野が好きだったということになります。

私にはそれがとても辛かったのです。

松野は松野で父親に強く交際を禁じられて、沈み込んでいました。

彼女の家では父親の意見は絶対ですから、それに従わざるをえないのです。

私は心にもないことを言って、彼女を励ましました。

「本当に好きなら、駆け落ちしたら? 私も応援するよ」

でも松野は力なく首を振りました。

「ありがとう。でもそれは無理。お金もないから生活できないもの。

それと、竹中君はこう言ってたんだ。

こんな風になったのなら、絶交しようって。

友達として続けることはできないから、梢には喧嘩して絶交したってことにしようって」

私は松野に言いました。竹中は私が知らない方が良いと思ってるんだね。

それじゃあ、私は知らないことにする。

そしてあんたたち2人が喧嘩して絶交したという話を信じた振りをし続けるよ。

でも良いの? 今度は竹中と私が2人だけで友達付き合いすることになるよ。

「仕方ないよ。それに僕は2人が間違いが起きるとは思ってないし」

私はふざけた調子で言った。 どうしてそう言いきれるの? 

そんなことわからないよ。

竹中はあんたのお陰で女体の素晴らしさに目覚めたのだから、私もつまみ食いしたくなるかも。

「あははは、そうだね」

松野は自信があるらしく、軽く笑って私の冗談?にあわせてくれました。

私にとっては実は冗談ではなかったのですが……。

 


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