祖母さまの教え-1
杉山梢(すぎやま こずえ)というのが私の名前。
杉山家といえば知る人ぞ知る旧家で資産家なんです。
広大な山野を持っていて、祖父の代ではそれなりの事業もしていたらしい。
でも父の代になってからは、悉く事業は失敗。
山を売って食いつないで行く生活が始まったのです。
そのころ私は天馬学園初等部に通ってました。
兄弟も全員金持ちの子弟が通う、この学校でした。
兄は2人弟は3人いましたが、この子たちは贅沢で我がままに育ったようです。
私は祖母さまから厳しく躾けられました。
杉山家は昔から男尊女卑の家風があって、男の子は我がままを許されました。
けれどたった一人の女の子だった、私は我がままは許されませんでした。
山を売って生活して行く生活なのに、兄弟たちはなんでも欲しがる物を買い与えられていたのです。
ただ祖母さまは、必ず私の分のお小遣いを父に請求していたようです。
いくら女の子と言っても、兄弟たちと平等にお小遣いを貰う権利があるというのが祖母さまの言い分でした。
私は欲しいものがあったときは祖母さまに言って買って貰いましたが、必要最低限のものしか買ってはくれませんでした。
鉛筆1本でも本当に短くなるまで使うようになったのは、その為です。
聞くところによると、世間の祖母さまというのは、孫娘には優しく甘いと言います。
けれども私の祖母さまは、その逆でした。
特に着る服についても、地味なものしか着させてくれませんでした。
祖母さまはいつも私に言いました。
「お前は不細工ではないが、特に器量が良いという訳でもない。
だから他の金持ちの娘たちのようにヒラヒラしたもので着飾っても、それほど効果はないし逆に時間と金の無駄遣いになる。
それより、我慢することを覚えなさい。自分の中身を鍛えなさい。
女でも……いや、女だからこそ強くならなきゃいけないことがたくさんあるのだから」