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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第三話-5

「そして、持ってた……彼女も」
今の話の流れから推測すると。
「雲木が、キツネの仮面を……?」
「……うん」


   ***


数ヶ月ほど前、移動教室の関係で付属棟へ行った一条楓は、廊下でキツネの仮面をかぶった雲木利乃とすれ違ったのだという。
一瞬姉の元彼だと思ってハっと振り返り、長い髪と短いスカートを目にして別人だと悟った。その元彼は既に死んでいたのだから、別人なのは当然なのだが。
「ねぇキミ!」
それでも新聞部員だからか興味をそそられ、雲木を呼び止めたらしい。
雲木は足を止め、振り返らずにこう言ったという。
「ボクに構わないほうがいい」と。


   ***


「調べたら名字も彼とは別だし、住所も違ったわ……」
一条は雲木を、死んだ元彼の妹だと思ったらしい。
「……ねぇ、あの動画を見たわ」
「動画?」
「私は情報を提供したんだから、今度はあなたが私の頼みを聞いて……」
そう言うと一条は、かぶっていた帽子を脱ぎ捨てた。
「え……?」
彼女には、
「病気じゃ、ないわよ……」
髪の毛が、
「ある朝起きたら、消えていたの……」
一切、
「抜け落ちたのではなく……」
生えていなかった。
「消えていた……」


   ***


一条の家を訪れた日の翌日。
「えっ」
部室へ顔を出すと、いつものようにパソコンに向き合ってる紅葉が後ろから抱きつかれていた。犯人は雲木。
「う〜ん!モミリンか〜わいいな〜!」
「…………」
紅葉は頬擦りされちゃっているが、されるがままだ。いいのかそれで。
「ぴゅあ!?」
謎の言葉を叫び、紅葉から離れる雲木。
「先輩こんにちは!言っておきますけど、ボクは百合属性ではないですからね?」
「ゆり……?」
何を言ってるんだこいつは。
「つーかお前、なんでここにいるんだ?依頼か?」
「違いますよ。もう忘れちゃったんですか?ボクも今日から、少年探偵団の一員です」
「探偵同好会な」
昨日の今日で、もうパソコン部をやめてきたのか。行動力ありすぎだろ。
雲木は「とうっ!」とスカートを翻してソファを飛び越え、そのままソファに着座した。下着見えるってバカ。


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