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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第三話-4

「あがって……」
写真との違いに唖然としていた俺だったが、一条に言われて我に返る。
「お邪魔します」
一条が背中を向け、とぼとぼと前を歩く。
「…………」
後ろから見ても、彼女の髪は見えない。
もしかしたら髪は切ったのではなく、抜け落ちたのかもしれない。重い病気にかかったらそうなると、前にドラマで言っていた気がする。
しかしだとすると入院しているはずで、自宅にいるはずがないんだよな。
一条の後に続き、階段を上る。
「一条さん。家の人たちは?」
「仕事……」
「そ、そっか」
たしか一条にはお姉さんがいるんだったよな。正直お姉さんのことも気になってたんだが。変な意味じゃないぞ?
「誰に言い訳してるんだ、俺は……」
「ん……?」
「ああいや、独り言」
一条の背中を見つめていると、不意に一条が振り返った。
「どうぞ……」
部屋に入るよう促される。
「し、失礼します」
なんだか緊張する。そういえば女の子の部屋って入ったことないかもしれない。
可愛らしい、いかにも女の子って感じの部屋だった。紅葉の部屋はきっと配線だらけだろうな。
「適当に座って……」
「それじゃ遠慮なく」
さすがにベッドやソファに座るのはマズイだろうから、絨毯の上にあぐらをかいて座った。一条はベッドの上に座る。
「早速だけど。一条が前に新聞部のサイトに書いてた『神様みたいな人』について、詳しく教えてくれ」
あの記事にはたしか、お姉さんの亡くなった元彼に似ているって書いてあったな。そこから先は読んでないけど。
「雲木さん、って知ってる?付属の子……」
「雲木?」
まさか雲木の名前が出るとは思ってはいなかった。てっきり男だと思っていたんだが。
「知ってる。雲木利乃、だよな?」
「そう……彼女が、似ていた。お姉ちゃんの、元彼に……」
雲木が元彼に似ているって?雲木が男に似てるってのは、正直想像できない。
「外見じゃない……雰囲気、口調……色々」
なんだ外見じゃないのか。そりゃそうだよな。
「ちなみにその元彼って、どんな人だったの?」
「不思議な人……心を読まれていると思うほどに、よく気が利いて……なぜか、外ではキツネの仮面をかぶってたみたい……」
仮面……?随分変わった人だったんだな。


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