第二話-4
紅葉は一旦俺が入力した文字を消し、相変わらずのタイピングタッチで新しく文字を入力する。
くそ。俺が5分近くもかけてやっと入力できたのを、わずか1秒ほどで……。
「……出た」
「どれどれ」
モニターに映し出された検索結果に目をこらす。
一件目。『女の子のヘソ画像ください』
二件目。『ヘソフェチ集まれー!』
三件目。『女の子のヘソって深そうだよな』
「全然関係ねぇじゃん……」
「検索ワードが悪い……」
「じゃあ紅葉だったら、なんて検索するんだよ?」
「…………」
紅葉は『臍がない』で検索をかけた。
ヒットしたのは外国にいるらしい『ヘソがないモデル』の記事。
「臍がないモデル、か……ってことは、臍がなくてもおかしくはないんじゃないか?」
「日向さんのヘソは、こうだった……?」
ヘソがないモデルの画像の、お腹の部分を拡大して訊ねてくる紅葉。
目を凝らして見てみる。若干窪んではいるが、たしかにヘソはない。
「病気になって、手術したみたい……」
日向さんとは違う。日向さんは窪んですらいなかった。まるでそこには、初めからヘソなんてなかったかのように。
「もし日向さんも病気で手術したってんなら、わざわざ俺に言ってこないだろ」
「……そうね」
どうなっているんだ?また須藤曰く『超常的な力』ってのが関係しているとでも言うのか?
「日向さんに、詳しく聞いてみたら……?」
「……だな。情報が少なすぎる」
昼休みが終わる直前に日向さんのクラスへ行き、放課後空いているかを確認したところ、彼女は野球部のマネージャーを務めているらしく、しばらくは無理だと言われてしまった。
***
そんなわけで次の日曜日。
部活は午後からで午前は空いているというので、日向さんに探偵同好会の部室に足を運んでもらった。
「わざわざありがとう。座って」
「はーい」
ソファに座るよう促し、俺は対面、紅葉はその後ろにあるPCの前の椅子に座る。
「……ヘソ、見せてほしい」
珍しく紅葉が体ごと視線をこちらに向け、そう呟いた。
「彼の言葉だけでは、信じきれない……」
「信用ねぇな俺」
「い、いいけど、探偵くんは目つむっててくれる?」