第二話-12
「な、なんだ突然……?」
「日向さんのために答えろ。お前はヘソフェチか?」
先ほど紅葉がしたのと同じ質問を、もう一度だけする。
「……ああ。お前は?」
「俺はわ……いや、俺のことはいい」
あぶな!なんだよ今のトラップ。危うく答えるところだった!
「ならお前、日向さんのヘソに対して何か言った覚えはあるか?」
なくなったヘソ。好きの裏返し。ヘソフェチ。答えは簡単だ。
「……ああ。言った。気持ち悪い、とな……だが実際、彼女のヘソは俺の理想そのままだった」
「お前の理想のヘソは知らん」
しかしこれで、日向さんのヘソを取り戻す方法はわかった。あとは……。
「日向さんに告白しろ。ヘソが魅力的ってこともきちんとな」
「必要、ない……」
背後から紅葉がそんなことを言う。
「必要ないって、なんでだよ?」
「今の会話を、本棟に流してた……」
「……本当、か?」
「…………」
別に『本棟』と『本当』をかけたシャレとかではなく。
つまり今までの俺と天之川の会話は、全部本棟の連中――日向さんに、聞かれていたってことになるわけだ。
「うおーーー!」
そのことを理解したのか、天之川が頭を抱えて叫びだした。
「かなり恥ずかしいこと言っちゃったよな俺!?ヘソフェチだとか、日向のヘソは理想的だとか、日向のことが好きだとか!?」
「……まだ繋がってる」
「うおーーー!」
これがあの鬼の風紀委員長と呼ばれた天之川だなんて、正直ちょっと前では考えられなかった。きっと明日から新しいあだ名をつけられるに違いない。ヘソフェチの風紀委員長、とか。
そんなことを考えていると、不意に扉がコンコンとノックされた。
「やっべーよ神代!もし日向だったらどうするよ!?俺どうすればいいんだよ!?」
「どうぞー」
「うおーーー!」
天之川を無視して、ノックをした人物に入ってくるよう促す。
扉を開けたのは予想どおり、日向さんだった。肩を上下させて呼吸も荒いので、走ってきたのだということがわかる。
「はぁ、はぁ……どうして」