第二話-10
「は、はぁ」
雲木は戸惑いながらも椅子に座り、マウスに手を添えた。
「それであの、何を調べたらいいんですか?」
「そうだな……とりあえず、メールの送信履歴が見たい」
雲木がマウスを動かし、Eメールの送信履歴を開いた。
「何もないみたいですけど」
証拠を隠滅されたってことだな。ま、予想はしていたさ。
「それじゃ、受信履歴は?」
「……何もないですね」
俺は再び紅葉に連絡をする。
「紅葉、神様にメールしてみろ」
『さっきから、ずっとやり取りしてる……』
「何……?」
だとしたら、このPCにメールが送信されてくるはずだ。しかしさっきから何も受信していない。このPCじゃないのか……?
紅葉との通話を終え、胸ポケットに携帯電話をしまう。
「なぁ、変な質問してもいいか?」
「なんです?」
「雲木は、あー……超能力とか魔法って、実際に存在すると思うか?」
我ながら馬鹿な質問をしたと思う。
「……ありますよ、超能力は」
「……え?」
その応えは『あればいい』という希望ではなく、『ある』という確信だった。
「もしかして、超能力者を見たことがあったりするのか……?」
「残念ながら。ただ、超能力者は見ていませんが、超能力なら見たことがあります」
雲木はそう言うと立ち上がり、最後に「この学園で」と呟いて去っていった。
「意味深だな……」
まさかあいつも、琴梨さんや日向さんのように、何かを奪われたのだろうか。
***
結局神様については何も手がかりを得ないまま、次の日になった。
「最近寒くなってきたよな」
「……10月も終わるから」
「そりゃそうだが」
日向さんのヘソは、どうすれば取り戻せるのだろう。やはり鬼の風紀委員長に話を聞くしかないのだろうか。
「そいや紅葉。付属3年の雲木って知ってるか?」
「うん……クラスメート」
「へぇ。あいつパソコン部の部長らしいんだけど、もしかして仲良かったりするのか?」
「別に……」
そうだよなー。いくら二人が同じパソコン好きでも、紅葉のローテンションにはついてはいけないわな。