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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第一話-3

琴梨先輩はそう言うと俺のことを睨んだまま、琴梨さんを連れて部室から出ていった。
「……取り戻せるの……?」
「わからん。けどまぁ、なんとかなるだろ」
「探偵を諦めて、医者になるのね……」
「ならないって」
まずは探偵らしく、琴梨さんのことについて聞き込みをしますか。本人や先輩が気付いていないだけで、過度なストレスがあったかもしれないし。


   ***


一週間後。
「くそー。結局失明の原因になりそうなものはなかった……」
わかったのは彼女の誕生日が4月であること、趣味は家庭菜園であること、好きなテレビはお笑い番組であること等々。役に立ちそうな情報は一つもない。
ちなみに先輩についての情報も手に入ったけど、まぁ胸のサイズなんてどうでもいいよね。
「神様にでも、奪われたんじゃないの……」
「だとしたらお手上げだなー」
神様なんて曖昧な存在は信じちゃいないが、もし仮に紅葉の言うとおり神の仕業ならば、ただの人間である俺にどうこうできる問題じゃない。
「神様といえば、一時間ほど前に変なメールが届いた……」
「変なメール?」
紅葉の背後からPCのモニターを覗く。
「……これ」
メールの内容はこうだった。

ナクシモノは見つかったかい?
もしまだ見つかっていないのなら、神様のもとを訪ねるといいよ。

「なんじゃこりゃ。誰から送られてきたんだ?」
「さあ……でも、この学園のパソコン室から送信されているわ……」
「そんなことわかんのかよ。すげぇな」
つまりこの変なメールを送ってきたのは、パソコン室に入ることができる学園関係者の誰かってことになるな。琴梨さんの失明と関係あるのかはわからないが。
「一時間前だっけ?その時間、パソコン室はどのクラスが使ってたかわかるか?」
「……付属の2年2組」
「琴梨さんのクラスだな……失明と関係あると思うか?」
「……ない、とは言いきれない」
「だよな」
ナクシモノってのは琴梨さんが失った視力のことだろう。
それにしても『見つかってない』っておかしな日本語だな。視力なんて見つかるわけないだろうに。それともどこかに落ちてたりするものなのか?
「もしかして……」
紅葉がPCのモニターをじっと見つめたまま、呟くように言った。
「狂言、なんじゃ……」


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