セフレだった女-1
彼女と言うポジションは、絶対的で、一番強い存在だってずっと思っていた。
「彼女がいるから」
その言葉だけで、大抵の“常識のある”女はすごすご引き下がる。
でもあたしの彼の周りに限っては、そんな言葉の意味が通じてない“常識のない”女が多いらしく、今でも花の廻りをフラフラ飛んでいる虫のごとく、彼に近付こうとするのだ。
ほら、今日も――。
「陽介!!」
穏やかな秋晴れの昼下がり。賑わいを見せる日曜日の繁華街。
いつものように手をしっかり繋いでデートをしていたあたしと陽介の背後から、突然その声は聞こえてきた。
あたしと陽介は、何事かと顔を見合わせてからゆっくり後ろを振り返った。
そしてあたしはハッと息を呑む。
何でそんな必要以上に驚いてしまったかと言うと、陽介の名前を呼んだ声の主が、まるでファッション雑誌から飛び出したかのように綺麗な女の子だったから。
とにかく小さい顔、透き通るような白くてつるつるのお肌、艶々と少し明るい茶色に輝く髪はシャンプーのCMに出れそうなくらい美しく、二重瞼の大きな瞳は涙袋がとってもセクシーで、その娘の完璧過ぎる容姿にあたしはポカンと口を開けたまま見惚れてしまっていた。
「おう、久しぶり」
肩越しに聞こえてきた声に、陽介を見上げれば懐かしそうに目を細めている所だった。
友達……かな?
一向に動揺もしない陽介を見ると、どうやらやましい関係のあった娘では無さそうだ。
無さそうだ……けど。
「いきなり電話もメールも繋がらなくなっちゃうんだもん。心配しちゃった」
そう言ってその娘は、陽介の着ていた白いTシャツの裾をつまんで上目遣いで彼を見つめていた。
タンクトップに大きく胸元の開いた切りっぱなしの白いカットソー、パンツが見えそうな程短いデニムスカート。
こんな際どい格好でも下品に見えないのは、この娘の持つ抜群の容姿のおかげだろうか。
でも、陽介の前だと身体を少しくねらせてるし、必要以上に彼の腕や肩に触れてきて、その際どい格好からフェロモンみたいなものが放出されている気がする。
この娘のそんな仕草や猫撫で声を目の前にすると、女特有の勘ってヤツがピーンと働いてしまった。
……この娘、陽介のことが好きだったんだ、と。