『桃子記念日』-1
スピンオフ・ガールズ・ストーリー
『桃子記念日』
『次は、黒花沢駅〜、黒花沢駅〜』
ラッシュアワーの人波を目いっぱい詰め込んで、電車は今日もそのダイヤグラムを進行させている。
「おにいちゃん、大丈夫?」
「ああ」
扉側に体を押し付けられる格好になっている桃子は、自分が人波に潰されないように、背後で“壁”になってくれている十歳上の従兄である宗佑を心配して、問いかけていた。
「桃子は、苦しくないか?」
「うん。おにいちゃんが、守ってくれてるから」
「そうか」
背中を従兄に向けたまま、首だけを少し傾けて、桃子が満面の笑みを浮かべていた。
「!」
少しばかり曲がりの大きい路線に入り、慣性が働いて、充満している人の波が大きく傾く。その傾きから桃子を守るようにしていた宗佑だったが、さすがにその圧力に耐えかねて、桃子の体を少しだけ、扉に強く押し付けてしまった。
「すまん、桃子」
「だ、だいじょうぶ、だよ」
言う桃子の呼吸に、乱れが生じていた。背中いっぱいに宗佑の圧力を浴びたことで、この従兄に抱かれた昨夜の熱いひとときを、思い出してしまったのだ。
「………」
太股の半分にも満たない、短い丈の、桃子のフリル・スカート。その小ぶりなお尻は、丁度、宗佑の太股に当たっていて、お互いに柔らかい感触を押し付けあっている。
「……っ」
スカートの上から、お尻を触られた。触っているのは、従兄の宗佑である。宗佑でなければ、桃子はすぐに、お尻を触ったその腕を掴み、捻りあげて、場合によっては折っているところだ。それぐらい、本来、桃子はとても勝気な性格をしている。
さわ…さわ…さわ…
「…ぁ………ん」
しかし、お尻を触っている相手が宗佑だとはっきりわかっているので、桃子は、抵抗を全くせずに、その手の感触をむしろ、悦びをもって受け止めていた。
(おにいちゃんの、スケベ……)
満員電車に乗って、自分を守るように背後に立ったのは、桃子を慮る気持ちは確かにあったのだろうが、こうやって、お尻を触ることも目的だったに違いない。
(“痴漢ごっこ”なんて……)
宗佑に、お尻を優しく撫で回される感触に、声が上がりそうになるのを堪えながら、桃子は身体の熱気を盛り上げていった。
「……っ……っ」
自分がおかしい様子を見せてしまえば、周囲がそれと気づき、ひょっとしたら誰か正義感のある人物がそれを見つけて、宗佑を“痴漢”として捕まえてしまうかもしれない。いくら同意の上とは言え、“痴漢”は立派な犯罪行為であるから、そうなってしまえば、宗佑はあえなく連行されてしまう。
「〜…っ……〜〜!」
だから桃子は、スカートの上からお尻を鷲づかむようにして、捏ねるように愛撫してくる宗佑の手に対して、必死に声を抑え続けていた。
とろ…
「!」
だが、身体はそうはいかない。股間の中央部に溜まった熱気が、粘り気のある雫となって、太股の内側を伝うように、垂れ落ちる。
とろ…とろ…とろ…
(や、やだ……とまらない……!)
不随意な身体の反応なので、桃子は、膝の辺りまで愛液が垂れていくのを、留めようがなかった。
…宗佑のお尻への愛撫によって、桃子が股間を濡らし、それがそのまま何にも邪魔をされず、伝い落ちていく。それはつまり、桃子は今、“パンツを穿いていない”と、いうことである。俗な言い方をすれば、“ノーパン”なのだ。
満員電車で、丈の短いフリル・スカートを穿いて、しかも、“パンツを穿いていない”という、桃子の今の状態が、常軌を逸していることは明白であった。
(おにいちゃんの、いいつけだもん……)
だが、桃子は、従兄の宗佑がそう望むのであれば、恥じらいはあれど、それを受け入れて、このように実践することに、何の躊躇いもなかった。
それだけ強く、桃子は宗佑を慕っているのである。