選択-6
「うん……良かった。ありがとう」
少なくとも嫌われてはいない、とケイは安堵して腕の力を抜く。
「あのさ……沢山デートしような?」
「え?」
他の人に聞こえないように耳元で囁くケイに、ポロはキョトンとした顔を向けた。
ケイは照れくさそうに笑って、今度は軽くきゅっとポロを抱く。
「まずは、たーくさんデートしてポロに楽しい事いっぱい教えてやるから……やってみたい事とか行きたいとことか考えといてよ?」
縛られた人生を送ってきたポロを、自分の欲の為に『婚約』とか『結婚』という形に縛りたくはない。
満足するまで自由を謳歌してからでいい。
それが、ずっと続いてしまっても……結果的に他の人を好きになったとしても……ちょっと悲しいけど、ポロが選ぶなら自由にしていい。
そう言うケイに、ポロは少しムッとした。
「私が他の人とお付き合いしても良いんですか?」
自分に対する愛情はそんなものか、とポロは悲しくもなる。
「嫌だけど……ポロが俺より良い男みつけたら……の話だからね」
そんな男そう簡単には見つからない、とケイはパチリとウインクして見せた。
何だかんだと自信過剰なケイに、ポロは思わず吹き出す。
「はい。見つけたら……ですね?」
クスクス笑って顔を上げると、目の前のケイが物凄い形相で目を見開いていた。
「わ……らった……」
「……ぁ……」
自然に浮かんだ笑顔に、ポロ自身も驚いた。
「笑ったぁ!!」
ケイの顔も驚愕から満面の笑みに変わって、ぐわっと両手を広げる。
「きゃあっ」
しかし、ケイの腕は虚しくも空を切った。
何故なら横からカリーがポロをかっさらったからだ。
「きゃあ♪笑った♪ポロが笑ったぁん♪」
ポロを抱いてクルクル回るカリーの腕の中で、ポロの顔は自然に笑顔を作った。
「うん!笑えた」
笑顔なのに涙が零れる……あぁ……これが嬉し泣きなんだ……とポロは益々嬉しくなる。
痛い、苦しい、怖い以外で初めて泣いた……凄く良い気分だ。
ケイは行き場の無くなった腕をそわそわさせた後、苦笑して姿勢を正した。
ポロを拾って、最も笑顔を待ち望んでいたのはカリーだ……ここは譲っておこう。