選択-21
「なっ」
大量の水がゼイン=ザルスとカリーを押し流し、2人は離れて数メートル流される。
「がはっげほっ」
首を離されて一気に空気を吸おうとしたら、思いっきり水を吸ってしまいカリーは激しく咳き込んだ。
「ごめんなさい。カリー、大丈夫?」
「げほけほっ……ポロ?」
背中を擦る小さな手と心配そうな声はポロのもの……カリーは涙目をシパシパさせながら声の方に顔を向ける。
「うん。ごめんなさい……力の加減が分からなくて……」
小さい身体を益々小さくして謝るポロの言葉を聞いたカリーは眉根を寄せた。
「え?加減って……今の……ポロが?」
涙でボヤけた視界をクリアにしようと目を擦ったカリーが見たのは、滝のような水の壁と両手を広げた女性の後ろ姿。
足元まである長い髪は深い蒼……広げた両手は不健康には見えないが青白い色……髪と同じ蒼い服は身体にぴったりとした肩紐のドレスで、裾は地面に広がって水面のように波うっている。
「な…に……?」
状況が掴めずに呆けた声を出したカリーに、女性が振り向いた。
その目は白目が無くて、ただの蒼……サファイアを嵌め込んだような綺麗な蒼だ。
「……綺っ麗〜」
思わず口から出た賛美の言葉に、女性は艶やかな微笑みを返す。
『オ初ニオ目ニカカリマス。ワタクシハ、「しーりー」ト申シマス。以後、オ見知リ置キヲ』
「あ……えっと……よろしくぅ」
丁寧に挨拶をされたカリーは間抜けに挨拶を返す。
ふんわりと笑みを浮かべたシーリーは、視線を前に戻した。
カリーはゆっくりと横に居るポロに顔を向けて、女性を指差す。
いったい何者だ、と聞きたかったのだが驚き過ぎて言葉が出なかった。
ポロは少し照れて嬉しそうに答える。
「私のパートナーの精霊さんなの……クインさんと同じで水の精霊……ケイさんに枷を外してもらって、姫様が仲立ちしてくれて……契約した」
シーリーはポロが産まれた時から彼女と共に居たらしい。
ポロは元から魔力を持っていて、凄く波長が合ったのだ。
別に気づいてくれなくても良いから、ポロを手助けしたくてずっと傍に居た。
しかし、さすがに魔物ザルスには太刀打ち出来なかった。
出来たのはポロの体内に注入された魔物の核を退治する事だけ。
結果、体内にとどまっている間に『封印』の枷をつけられて、ポロの身体から出れなくなった。