投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

アンバランス×トリップの最初へ アンバランス×トリップ 211 アンバランス×トリップ 213 アンバランス×トリップの最後へ

選択-2

「8年前と何も変わってねぇのな」

 ゼインは男が座っている瓦礫の下まで来ると、男を見上げた。
 男はゆっくりとぎこちなく立ち上がり、瓦礫を降りて来る。

「おかえりなさい。ゼロ」

 相変わらず微妙にずれた応えを返した男に、ゼインは少し息を吐いた。

「ただいま」

 この男との会話が成立しないのはいつもの事だ。
 ゼインはまともな会話を諦めて、今にも転げ落ちそうな足取りの男に手を差し出す。
 不自然な動きでゼインの手を握った男は、ゼインに引かれるまま地面に降り立った。

「……耳と尻尾が在るように見えるのは、目の錯覚ですか?」

 ゼインを間近に見た男は、顔の上半分を覆っている仮面の下で目を瞬く。

「錯覚じゃねぇよ。最近、出してると楽な事に気づいたんだ」

 男の手が伸びてゼインの耳に触れ、ゼインはピッピッと耳を動かして見せた。

「君は本当に素晴らしいですね」

 魔物の力を吸収した上に、それに呑まれる事なく使いこなしている。

「……あんたの『器』として……だろ?」

 ゼインの言葉に、男の口元がぐにゃりと歪んだ。
 これでも微笑んでいるつもりなのだ、この男は。
 他の表情は作れるクセに笑顔だけは下手……というか、出来ない。

(ポロと一緒だな)

 ゼインは目を閉じて下りてきた男の手に頬を寄せた。

「……良いよ。あんたにやるよ……この身体」

 ピクリと動いた男の手に、ゼインは自分の手を重ねる。

「……やるよ……好きにすれば良い……」

 開いたゼインの蒼い目は、真っ直ぐに男の乳白色の目を見つめた。
 視線を合わせたままゆっくりと顔を近づけた男は、ゼインと唇を重ね、ゼインはそれを抵抗せずに受け入れる。
 そのゼインの身体がビクンと跳ねて、ずるりと崩れた。
 男はぐったりした小さな身体を優しく抱き止める。

「君は……私です」

 ゼインの背中から突き出た血まみれの触手が、愛おしそうにゼインに絡む。
 地面からもボコリボコリと触手が現れて、2人の身体を隠すように包んでいった。


 眩しい太陽の光が顔に当たり、それから逃げるようにカリーはもぞもぞと頭から布団を被った。
 サワサワとベットの上を這い回る手が、ピクリと止まった後パタパタと叩く動きに変わる。

「……ゼイン〜?」

 冷たいベットの感触を不審に思ったカリーは、布団を頭に被ったまま上半身を起こした。


アンバランス×トリップの最初へ アンバランス×トリップ 211 アンバランス×トリップ 213 アンバランス×トリップの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前