選択-19
「だから特別……ね……スランも殺しちゃおっかなぁ」
「お前な」
特別なのは自分だけが良いのに、よりによってこの男を特別視するとは……どうやらゼインは博愛精神の持ち主らしい。
「じゃあ、世界はどう?そこらへんの木でもいいし……エン導師が放った炎でもいいわ……どんな風に感じる?」
ゼイン=ザルスはゆっくりと視線を巡らせた。
ゼインの中に自分の核を入れたザルスは、ずっとゼインの記憶を見ていた為、まだちゃんと周りを見ていなかったのだ。
前の器から見ていた木々は進路を妨害する障害物、炎は熱くて厄介な攻撃の象徴……そう、見えた。
しかし、ゼインの目から見る木々は優しい日陰を作る休息所で、小さな動物達の住処。
炎は暖かい守りの象徴に見える。
「……ゼロの世界は……輝いてますね……」
ぽやんと放けた顔で周りを見ていたゼイン=ザルスがポツリと呟いた。
「私はそれをゼインと一緒に見たいの……ゼインと一緒に……だから、その身体返して。ゼインに返してよ」
カリーの言葉は最後の方で涙声になるが、カリーはそれをグッと堪えてゼイン=ザルスを睨む。
「嫌です」
しかし、あっさり拒否られカリーは思わずクインからずり落ちそうになった。
「ゼロは私です……私はゼロ以外に特別なモノは要らないのです。だから……あなた達は要らない……ゼロは誰にも渡しません」
そう言ったゼイン=ザルスはダンッと地面を蹴って飛び上がった。
一瞬でカリーの目の前まで来たゼイン=ザルスの乳白色の目に、カリーの身体から一気に血の気が引く。
ゼイン=ザルスは両手を組んで頭上に上げると、カリーに降り下ろした。
ガッ
「っ!!」
『クッ?!』
カリーは腕を交錯させてそれを防ぐが、勢いに負けてクインもろとも地面に叩きつけられた。
「カリオペ!!」
ズガンと盛大な土煙をあげたカリーとクインを追いかけるスランとアビィに、ゼイン=ザルスが左手を向ける。
「君も要りません」
「!!」
ゼイン=ザルスの左手の平から青白い光が放たれた。
『ケシャアァッ』
同時にアビィの口から猛火が吹き出し、ゼイン=ザルスの光と激突した。
光と炎は絡まり合った後、お互いのエネルギーを相殺して消える。