選択-10
「キャラが望んでやってる事だ。気にすんな。ただ、ヤバくなったら強制的に止めさせるからな。俺にとっちゃチビ魔物なんざどうでも良いし……先に謝っとくわ。悪ぃ」
お互いの大事な人の為だけに行動する事を宣言し合う2人。
「んふ♪良い男ねん♪」
「あんたも中々良い女だ」
2人は目を合わせると、同時に口を開いた。
「ゼインのが良い男だけどね」
「キャラんが良い女だがな」
クククッと喉で笑う2人……そんな2人を、スランとケイは呆れた顔で眺めるのだった。
合流してから、約半日かけてクラスタまで移動した一行は瓦礫と化した建物を見つけてそこに降り立った。
「な……にぃ?これぇ?」
そこには、巨大な蕾……みたいなモノが地面から生えていた。
ドラゴン=アビィがすっぽりと収まる大きさのそれは、カサカサに乾いた細い木の根のようなもので覆われており、隙間から青白い光が明滅している。
地面には蕾を中心にして赤黒い触手が放射線状に伸び、赤黒い触手はドクンドクンと微かに脈動して、まるで蕾に血液を送っているようだ。
一行がドラゴンから降りると、ドラゴンは光に包まれてエンとアビィに別れる。
全員がぽかんとして蕾を見上げる中、キャラの身体がグラリと傾いだ。
「おとと」
丁度、横に居たケイがそれを支えるが、キャラはお礼を言う気力さえ残っておらず、汗だくで荒く呼吸を繰り返すだけ。
「ケイさん。何処か場所を移しましょう。出来るかどうか分かりませんが、回復を試みてみます」
「わかった」
ポロの提案にキャラを抱き上げたケイがチラッとアースに目配せすると、アースは魔法陣を維持しつつ軽く頷く。
こちらも額に汗を浮かべており、余裕の無さが良くわかった。
(こりゃ、マジで当てにならねえな)
いつもさらっと難しい事をこなしている2人だが、今回はいつも以上に魔力を使う役割な為に余裕無し。
もし、バトルになったらカリーとスランで肉弾戦、魔法攻撃がエンとアビィ……防御はケイとクインの役割になりそうだ。
(気合い入れねえとっ)
魔法は苦手とか言ってる場合じゃない。
ポロだって魔法なんか学んでいないのに、不思議な力を自分なりのやり方で見事に使っているじゃないか。
(負けらんねえ)
彼女を守ると決めたのだ……守られるのは海の男としてプライドが許さない。
ケイはグッと腹に力を入れて、ポロの後を追った。