ある夏に吹いた風-8
きっと独占欲が、軽蔑に繋げているのだろう
それから、毎日の様に遊びにいってはテントの中、海の中、時には建物の影や盆踊り会場の社の影など、カスミさんと夢中になってSEXをした
何度か留守だったり、テントの上にランニングシャツが掛かってることはあった
ゴミ袋の中に使用済みコンドームは増えているが、俺にコンドームをつけさせることは無かった
兄ちゃんも何度か食べ物を持ってカスミさんの所に出かけるのを見たが、コンドームをつけないでカスミさんとSEXできる俺を自分で「兄ちゃんより特別な存在だ」と心の中で勝ち誇った
夏休みが終わり、俺は学校から帰るとお母さんからカスミさんが旅に出たのを知らされた
俺はランドセルを放り出し、“カスミさんの家”に走った
崩れかけた塀の真ん中にはテントの跡の脇に寂しそうに蛇口が立っていた
庭の隅には穴が掘られ、燃やされたゴミがくすぶっていた
中からはゴムと焦げたたんぱく質の生臭い匂いが微かに上っていた
俺は村中を走った
もう、村にいないのに、カスミさんの姿を探した
大人の視線が痛い
大人に恋した子供を見る視線なのだろう
けど、俺にはカスミさんが…うまく言えないがカスミさんが近くに居てくれないと駄目だと思った
夜になり、疲れ果ててトボトボと帰ってきた俺を家族は暖かく迎えてくれた
お母さんが俺の好きな唐揚げを山ほど作ってくれたが、半分も食べられなかった
疲れているからではない。胸が苦しかったから
カスミさんが旅立つ挨拶に来たとき、お母さんが行く先を尋ねると「無いです」と答えたらしい
次の日、“カスミさんの家”に行ってみる
やはりそこにはカスミさんの姿は無かった
ゴミを燃やしていた火は完全に消え、燃えそびれたカスがまばらに覗いていた
その中にトウモロコシの芯が二本、寄り添うように埋まっていた
しばらくの間、カスミさんが新しい土地で見知らぬ男達とSEXしていると思うと、悔しくて寂しい思いに駆られた
そして、何で俺を置いていったんだと思うと涙で枕を濡らした
それから数年が経ち、高校になると友達との猥談にカスミさんの話が上がった
みんなの間でも、カスミさんは自慰のオカズだった
カスミさんが村を出た日に、村中を走り回った俺は笑いの種にもなった
俺は一緒に笑って「青春を先取りしてたのさ」と格好つけてさらに笑いを呼んだ