恋-4
「そうだな……多分、ちゃんと奴の体質に馴染んだかどうか、だな」
しいて言えばゼインは試作品。
手探りで試験を繰り返し、不安要素を徐々に取り除き、時間をかけて造られている。
ポロの話も聞いたが彼女……いや、彼女達の場合は身体の回復力を上げるのがメインであの男の体液注入は1度だけ。
しかも、魔物の核まで同時注入だ。
ゼインのように何回も、何十回も注入されてはいない。
「それで運良く死ななかったらこうなるワケ?」
スランの言葉にポロがビクリと反応した。
カリーはポロの手をキュッと握って、無神経なスランを睨む。
「わり」
スランは両手を上げて素直にポロに謝った。
「いえ……私も気になります」
ポロはカリーの手を握り返してスランを真っ直ぐ見た後、ゼインにその視線を移す。
「アイツらはそうかもな……でも、ポロはある意味成功例じゃねぇかと思う」
かと言って、ゼインと同じではない。
ゼインは魔物の力に耐え、それを吸収し自分の力にした。
だが、ポロの場合は魔物の力と共存している感じだ。
それなら、ファンの召喚師姫が『ダブって見える』と言った事にも納得がいく。
枷はその魔物部分がポロの身体から離れないようにする為に付けられているのではないか、とゼインは思っている。
「でも、あの人は『ゼロ』を造りたかったから……私はいらなかった」
多分、ポロがゼインと同じように魔物の力を吸収したとしても、『ゼロ』ではないので結果は同じだっただろう。
ポロは小さな声で話を続けた。
「そう言えば……あの触手の人達は『手足』と呼ばれてた……自分の意思で動いているように見えるけど、あの人の『手足』」
多分、この光景も『手足』を通して見ている筈だ。
「なるほどね……」
スランは指で顎を掻いて『手足』達を見る。
攻撃している時、触手が先行して動き、身体の方の反応が遅かった理由が分かった。
触手型の魔物が人間の皮を被っていると考えると、確かにポロは違う。
あの男と意識は繋がってないし、触手も出せない。
「お前の相棒は凄ぇな」
考えに耽っていたスランに、不意にゼインが言った。
「何が?」
相棒とはスランの鷹の事だ。
触手に侵され、自分の手で殺すしかなかった鷹のどこが凄いのか、とスランは眉をひそめる。
「奴の体液は身体を内側から喰っていく感じだ。治癒能力も上げてない、小さな身体でファンまで翔ぶって……凄ぇよ」
スランに会いたい一心で彼の元に翔んだ。
身体が変化していく、内側から喰われる痛みに耐え、飼い主の……スランの元へ。
鷹にも分かった筈だ……自分がもうすぐ死ぬ事ぐらい。
だから、最期はどうしても大好きなスランの手で……とか思ったのかもしれない。