恋-11
「いいなぁ〜完全共有ってどんな感じ?」
『クク?』
まだ完全共有出来ないケイとクインは羨ましそうにエンに聞く。
「ん〜…普通とは違うかもしれないけどぉ……さいこぉ〜超気分良い〜スッゴい高揚感〜……かな?」
「……全然、伝わらねえ……」
「あはは〜伝わらないねぇ」
『キュキュ』
やってみないとわからない、とエンとアビィは同時に息を吐く。
「で?あの焼け焦げた建物が例の施設か?」
アースは地面に転がった死体を足で蹴りながら聞いた。
ごろりと仰向けになった死体は内側から弾け、内臓じゃない何か……赤黒い触手のようなものがはみ出ている。
「ああ、スランが指示を受けてたって場所だけど……この様子じゃゼインがぶっ壊したんだろうな」
死体の脇にある巨大な足跡はゼインのものだ。
「ゼインってチビだったのに、こんなに大きくなったんだな」
「いや、チビだよ。それどう見ても魔物ん時の足跡だから」
そんな獣じみた足跡が人間なワケない。
キャラのしみじみした間抜けなセリフに、ケイは苦笑混じりに答えた。
「……そんなチビとヤッたのか?」
会話を聞いていたアースは無表情でキャラに問いかける。
怒らないとは言ったが、妬かないとは言っていない。
やはり妻の過去の男は気になるのだ。
キャラはニヤニヤと意地の悪い顔に、そっと手を添えてうっとりと思い出す。
「ゼインはチビだけど、アソコは規格外の大きさと硬さなんだよなぁ……あぁ……久しぶりに……」
「ヤメテ、ヒメサマ。オネガイダカラ、ヤメテ」
キャラの口から出そうになった卑猥な言葉を、ケイは泣きそうになりながら棒読みで遮る。
アースもエンも素のキャラとの付き合いが主だが、ケイにとっては我が国の可憐なるお姫様なのだ。
ただのファン国民で唯一、素を知っているというのはかなりの特別扱いなのだろうが……正直、そんな特別扱いは嫌だ。
「あら、失礼」
キャラはわざとらしい女言葉で謝ってみせるが、ケイが泣きそうなのは変わらない。
「もうここに居ねぇってこたぁ南の端かぁ……エン、行けそうか?」
話を反らしたアースは、未だに地面に転がっているエンとアビィに目を向けた。
ファンから南の大陸の中心まで3日で来た。
ゼインが居たという南の端、クラスタに行くまで単純計算なら5日足らずで着く筈だ。