〈悲哀奴隷・銭森瑠璃子〉-4
『……さっき「私に来い」って言ったよな?今更“嫌”とは言わねえだろう?』
「〜〜ッ!!!」
駄目だ……筋力でも敵わず、言葉でも瑠璃子は専務に負けてしまっている……部下が大翔の檻に腰を掛け、その蹲る頭部にピストルを向けた……もう瑠璃子には、一切の選択肢は残されていなかった。
(な、何を!?……やめて……やめてよぉ!!)
狼狽えの色の隠せない瑠璃子の瞳に、カメラを構えた部下の姿が映った。
何を“記録”するのかは、説明は不要だろう。
『麻里子に美津紀や文乃のレイプの話をしたんだが、いまいちピンときてなかったからな……だから春奈にお前のレイプシーンを見せようと思って準備してたんだが……これじゃレイプじゃないなあ?』
歯をギリギリと鳴らして睨む瑠璃子の頭を撫で、専務はケラケラと笑った。
「は、春奈はアンタ達なんかには捕まらないわ!!バカにしないで!!」
悔し紛れな叫び声は、鬼畜達の爆笑を誘うには充分であった。
文乃や美津紀、麻里子といった逮捕術に優れた刑事ですら家畜とされてしまったというのに、最弱としか思えない春奈になど、一体なにが出来るというのか?
それに言ってる本人も簡単に捕えられ、これから弄ばれようとしているのにだ。
負け惜しみにしては失笑物に過ぎた、正に愚の骨頂と呼べる叫びだ。
『立てよ。大好きな“彼氏”の為に作った可愛い姿を撮ってやるからよぉ』
「は、離して!私はアンタ達の好きには……」
専務は瑠璃子の髪を掴んで立たせると、部下は手枷を外して五体を自由にした。大翔には至近距離から銃口が向けられているし、その周囲には部下達数人が陣取っている。
いくら全力で突進したところでピストルをどうにか出来るわけは無いし、その前に大翔は絶命しているはずだ。
つまり、瑠璃子には従順しか残されてはいないのだ。
『……お前からキスして来い……八代にしたみたいになあ』
(ッ!!!)
思い返したくもない過去をほじくり返しながら、屈辱的な命令を専務は下した。見る間に瑠璃子の顔は歪み、目元も口元もピリピリと痙攣してきた。
殴り掛かり撲殺も厭わぬ感情が爆発しているのに、それも叶わぬ悔しさが、誰の目にも透けて見える……それは鬼畜達の愉悦へと変換されていった。
『姉妹を姦しまくった男に自分からキスするのを見て……春奈ちゃんはどう思うかな?……早くしないと撃ち殺すぞ……』
「くッ…!!!」
瑠璃子は意を決し、専務の肩に手を添えて爪先立ちになり、怒りに震える唇を重ねた……専務は薄気味悪い笑顔を湛え、舌をベロリと伸ばし、そのピンク色の唇の隙間へと滑らせた。