晴れの日にまた会いましょう-4
『こんばんは!奏です。番号とメアド、ありがとうございました!陽さんはどのバス停からあのバスに乗ったんですか?』
『あ、気付いてくれてよかった。気持ち良さそうに寝てたから起こしちゃ悪いと思って。
バス停はね、いつも俺が朝降りるバス停があるだろ?あれの1つ前から。』
そう彼から返ってきたのは3分後。1時間待ちとか覚悟してたのに嬉しい!
『1つ前だったんですか!あの、陽さんって雨の日だけバスですよね?普段はバイクで通勤なんですか?』『そう。でももうすぐ車買う予定だからもうバスに乗ることも少なくなるだろうな。』
そんな…
バスでさえ会えなくなったら…
いやだ!
高校1年の春…2年前からの片思いをこんな形で終わらせたくない!やっと声も聞けて、名前も歳も分かって、メールも出来るようになって…
諦めたくないよ!
気付くとあたしの指はこんなメールを作成していた。
『バイクでどこか連れていってくれませんか?』
いいよね…?
ここで拒絶されたらおしまい…それでもあたしは少しでも陽さんに近づきたい!いい返事が返ってきますように…
ピッ!
あたしは祈るような気持ちで送信ボタンを押した。
晴天の日曜日。
あたしは海にいた。
彼と一緒に。
「どこに行きたい?」と、聞かれたあたしは迷わず「海!」と、答えた。
ドライブにはすごく定番だけど、綺麗な海を好きな人と一緒に見たいと思ったのは本当。
綺麗な海を見ながら、彼に想いを伝えよう。
そう思った。
「おー、やっぱりここの海はいいな」
目の前な広がる大きな海を見ながら彼がつぶやいた。
「ほんと…やっぱり海リクエストしてよかった!」
そう言いながら隣に立っている彼の方を向くと、彼が微笑んだ。
やさしい顔。
今はあたしに向けてくれている。それが嬉しくて、すこし照れた。
言いたい…
陽さん…ずっとあたしの傍にその笑顔で居てくれますか?
「あたしね…高校1年の春の雨の日に陽さんを初めてバスの中で見ました。なんてスーツが似合って、爽やかな人なんだろうって思った。今考えると憧れの目で見てたんだと思います」
もう、あたしに迷いは無かった。
「好きです」
彼の目を見て、あたしはそう伝えた。
彼はふと目をそらして歩きだす。
心のどこかがズキンと痛んだ。やっぱりだめか…
「俺は、もっと前から奏ちゃんを知ってるよ」
「え?」
「佑介が連れてきたんだ。小ちゃい時の君をね」
「…兄ちゃんが?」
「バスで初めて見た時は全く分からなかった。あの名前を聞いた日に初めて佑介の妹だって分かったんだ」
「俺も好きだよ」
「え…」
ざわざわいってる。
波の音?
雨の音?
あたしの心?
もう分からない―…
「ほら、そんな泣きそうな顔するなよ。奏。」
「うー…」
「奏。」そう呼ばれた瞬間、あたしは思わず砂浜にしゃがみこんでしまった。嬉しさや、安堵感、色々な物が交ざって涙としてこぼれ落ちた。