晴れの日にまた会いましょう-2
「ケータイ、持ってる?」
急に彼が話しかけてきた。え、これはどういうこと?もしかして「メアド教えて」とか?
「あ、はい。持ってます」「そっか。使わないの?」「ここでですか?ペースメーカーの方がいらっしゃるかもしれないし、バスや電車では使わないことにしてるんです」
「そっかそっか。」
彼はニコニコしながら再び目線を前に戻してしまった。
なんなんだ一体…。
「じゃあ、また」
「あ、はい」
気付いたらもう彼の降りるバス停だった。
てゆーか、「また」って?期待していいのかな…それとも、挨拶?
「か〜な〜、今日は雨だったけどぉ、どぉだったのよ雨の君は」
ニヤニヤしながら話し掛けてきたのは佑奈。
いかにも人の恋愛を茶化している顔。
「てゆーか、雨の君って雨男みたいじゃないの」
「だって雨の日しか会えないんでしょー?」
「…まぁね。てるてる坊主逆さに吊ろうかな」
「あー、そうすると雨降るんだっけ。じゃあ作ってあげるよ」
「さんきゅ」
約束どおり、佑奈はてるてる坊主を作って教室のベランダに逆さに吊してくれた。
なんだか…顔は変だったけど。作ってくれただけで有り難い。
佑奈、ありがと。
翌日。
「…うそ…」
雨!雨だ!
あの人に会える!
憂欝な雨のはずなのに今日のあたしの気分は弾んでいた。昨日のあの出来事が、今日も何かあるんじゃないかと思わせている。
準備はいつも寝呆けながらだから、時間ぎりぎりになるのに今日は時間が余るくらいだった。
バス停にも10分前に着いちゃったし。…ちょっと張り切りすぎかな。
バスに乗ったあたしは雨粒が流れていく窓を見やる。今日も昨日と同じ席に座れた。
神様、雨を降らせてくれてありがとう!
すると彼が乗ってくるバス停についたというアナウンスが。
ついた!
あたしは空間に穴でも空きそうなくらい乗車口を見て彼の姿を探す。
あ…
彼の姿。相変わらずのスーツ姿は格好いい。
え?
彼は真っすぐあたしの席にやってきて「座らせてね」と言って座った。
あ、昨日よりくだけた口調…少しは打ち解けてきたのかな。てゆーか、どきどきする!近いよー!いや、嬉しいけど!
「ねぇ、名前教えてもらっていいかな?『ねぇ』じゃ呼びにくいし」
「あ、はい、奏です!『奏でる』っていう字で奏」
「奏ちゃんね。名字は?」「篠原です。あの…あなたは?」
「俺は伊地知陽っていうの。陽は太陽の陽」
「イジチヨウ?」
「そーそー。よく出来ました」
彼はそう言ってあたしの頭を撫でてくれた。
やばい、頭熱いよぉ…嬉しすぎ!