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あいかわらずなボクら
【青春 恋愛小説】

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VS歩仁内-8

「あ、あの……、おばさんこんにちは。あたし達、桃子のお見舞いに来たんですけど……」


さすがの沙織も少々面食らったようだが、なんとか愛想よく挨拶をしていた。


すると玄関のドアが勢いよく開いて、


「まあ〜、悪いわねぇ沙織ちゃん」


と、ぽっちゃりした体躯の石澤母が満面の笑顔で出迎えてくれた。


沙織はホッと安心すると、ニッコリ笑ってゼリーの入った箱を石澤母に渡した。


「あら……、お友達も一緒なの?」


石澤母は、やがて俺達の存在にも気付いて、一人一人に微笑んでくれた。


愛想よく挨拶するみんなに倣って俺も頭を下げるが、そのままなかなか頭を上げることができなかった。


なぜならさっきの石澤母の登場で、一番最初に目に飛び込んできた彼女の半袖Tシャツがインパクトが強すぎたからだった。


“NICE BODY”とでっかいロゴが入った半袖Tシャツ。


そのロゴの下にモデル風の外国人の女がプリントされているのだが、石澤母の貫禄ある腹によって、みょーんと横に広がって、モデル風の女がなんだか不細工に映っていた。


彼女の体にピッタリし過ぎたTシャツは、悩ましくもボディラインが露わになっていて、脇腹の肉が段々になっている所なんかは、なんとなくタコ糸でしばられているハムを連想してしまった。


以前石澤が、自分の母親のファッションセンスについて、“安ければサイズもデザインも気にしない”と愚痴をこぼしていたのを思い出し、ああこのことを言ってるんだなと、妙に腑に落ちてしまったのだ。


この無頓着さなら、貸しっぱなしになっていた俺のパーカーを自分のものとして勝手に着ていたのも頷ける。


とは言え、初対面で服装を笑ったら失礼極まりないと思い、俺は必死で口元を手で覆い隠し、笑いをこらえていた。


チラッと視線を横に移すと倫平も、歩仁内も、本間まで下唇をグッと噛み締め肩を震わせている。


やっぱりおかしいと思っていたのは俺だけじゃなかったんだとわかり、誰にも気付かれないようにホッと小さく息を吐いた。



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