VS歩仁内-5
◇ ◇ ◇
「なあ、ケーキの方がよかったんじゃねえか?」
俺は不満気に沙織の顔を見た。
放課後、俺達五人は石澤の家に向かう前に、鈴木屋というケーキ屋に寄った。
俺に負けじと甘いもの好きな石澤なら、ケーキを喜ぶと思ったのに、俺の意見をあっさり却下した沙織は、ゼリーとプリンをそれぞれ五個ずつ選んでさっさと詰めてもらっていたのだ。
店を出ても、ブツクサ文句を言う俺に、
「まあ、体調がよくない人にケーキはヘビー過ぎるだろ? 日持ちだってしないし。口当たりがいいゼリーみたいなのの方が、無難なんじゃねえの?」
と、倫平がまるで沙織の言いたいことを代弁するかのようになだめてきた。
「そういうこと」
沙織は、クスクス笑いながら俺にゼリーの入った箱を寄越すと、倫平の自転車の後ろにサッサと乗り込んだ。
「おい、沙織。お前自分の自転車あるだろ?」
俺は電車通学だから、今日は倫平の自転車に二人乗りして石澤の家に向かうつもりだった。
いきなり俺の指定席をとった沙織に、彼女の自転車を指差しながらそう言うと、
「修、あたしの自転車乗っていいよ。あ、箱は一応傾けたりしないでね」
と呑気な顔して笑い、倫平の肩に手を置いた。
「オレもさ、お前乗せるより沙織の方がいいんだ」
倫平はニヤリと笑うとサッサと自転車を漕ぎ始めた。
「ホント仲いいな、あの二人は」
そんなことを言いながら、歩仁内も本間と並んでアイツらの後を追うように自転車を漕ぎ始める。
しばし呆気にとられてた俺は、ハッと我に返り、慌てて自転車のカゴにゼリーの入った箱を収めた。
そしてサドルが少し低い自転車に跨り、急いでアイツ等の後を追いかけた。