私にも気持ちいいこと教えて下さい-3
「いやぁ〜 若いっていいねぇ〜♪」
突然、僕の背中から茶化すような声が聞こえてきたかと思うと、
そこにはスーツ姿に身を纏った美しい女性がひとりたたずんでいた。
「えっと…… ど、どちら様で?」
「はぁ? 君は一晩眠ると愛しのお姉様を忘れてしまうのかね?」
「…………も、もしかして美咲さんですか???」
「もしかしなくともだよ…………」
そこにいたのはフチ無し眼鏡にいつになく気合いの入った入念メイク、
長い髪はひとつに束ねられ、いかにも出来る女を意識した恰好の美咲さんだった。
「な、なんか人が変わったみたいに見違えましたね…………」
「ふふん………… 今日は論文発表だからね。気合いの入り方が違うのさ♪」
「いや、ホントに………… すごく綺麗です…………」
「お、おっと………… 私まで追い出すつもりかい?」
そう言って美咲さんは眼鏡を指であげると、
意味深な顔で僕の目をじっと見つめ返した。
「お、追い出すって………… さっきから二人ともいったい何を言ってるんですか?」
「うん? ここの寮は恋愛禁止だと聞いていたが?」
「はい、そうですがそれが何か?」
「い、いや…… ふむ………… 確かにこれは鈍感と言わざる得ないな」
腕を組みまたしても眼鏡をなおしながら、少しばかり頬を染める美咲さん。
ホント二人していったい何が言いたいのやら、僕には皆目見当がつかなかった。
「ま、野暮な事する義理はないからいいけどね…………」
「野暮? ですか?」
「あはは、何だか先輩が恋愛禁止なんて言った意味がよく解ったよ」
「な、何なんですか? 意地悪しないで教えて下さいよ…………」
そんな僕の言葉など聞く耳持たず、
美咲さんもまた靴を履き、いそいそと出掛ける準備をしていた。
「今日は遅くなるんですか?」
「あは、いい男が引っかかったら泊まりになるかもよ?」
「駄目ですよ? そういうのを抑止するためにここにいるんでしょ?」
「えぇ〜? せっかくそのつもりで勝負下着まで履いてるのにっ」
チラリとタイトスカートを捲りあげ、
まるで僕に見せつけるように黒の下着を露わにする美咲さん。
股布から上が透けてるレースの高そうな下着。
確かにそれはまごう事なき勝負下着だろうけど…………
「だ、駄目ったら駄目です! 秋子さんに言いつけますよ?」
「むぅ………… だ、だったらっ」
「だったら?」
美咲さんはスカートから手を降ろし、ゆっくりと僕に近づくと、
顔を近づけ耳元で囁くようにこう呟いてきた。
「だったら君が私の火照りを沈めてくれるのかい?」