厨房 旭(アキラ)の事情(旭って誰?)-2
「今まで本当にありがとう」
旭はもう一度、佐代の目を見つめて頭を深々と下げた。
(ダ、ダメ〜、そんな目で見ないで…)
旭の目を見つめながら、佐代は悲しさを我慢してグッとこらえた。
「じゃ、先に出るから」
旭はそう言うと、お互いに一口も口を付け無かった飲み物の伝票を掴み、名残惜しさを断ち切るように佐代に背を向けるとレジへと進んでいった。
(ありがとう、佐代ちゃん。黙って見送ってくれて。これで振り返らずに自分の道を歩むことができる)
そう思っていても旭の肩は自然と震えてくるのだった。
佐代にはそれが限界だった。
「旭くん待って!」
自分の前から立ち去って行く旭の後ろ姿を目で追っていた佐代は、愛する男の震える肩を見ると我慢できずに、店内に響くほどの声を出していた。
「うっ!」
心から愛する女の言葉に、旭は立ち止まらずにはいられなかった。
ゆっくりと振り返る旭。そして目に涙を浮かべて見つめる佐代。店内の他の客たちも突然起こった男女のドラマを固唾を飲んで見守っていた。
感動の準備をしているギャラリーの前で佐代は口を開いた。
「ねえ、最後にエッチしよ♪」
寂しさと悲しさの我慢には耐えれた佐代だったが、性欲だけはグッと我慢できなかったのだ。
精力絶倫の旭に求められるまま応じ続けた佐代は、いつしかセックスの無い生活に我慢が出来ない体になっていたのだ。
「やっぱりそうやんな。最後は一杯セックスせんとスケベな佐代ちゃん納得せえへんわな」
絶倫の旭も生真面目さを微塵も感じさせないニヤニヤとやらしい笑みを浮かべて答えた。
「そうよ、それやん!今日は関西弁でセックスする日やんな。ウチこの曜日が一番萌えるねん」
男女の営みには色々ある。このカップルはコスプレしたり、軽くSMしたりと曜日によってセックスの方法を変えていた。そして、この日は佐代の好きな関西弁での言葉責めの日だった。普段聞きなれない言葉での責めは、佐代にいつも以上に興奮をもたらせるのだった。
「ああん、ほら見てくれへん、アソコがグチョグチョ〜」
一気にテンションの上がった佐代は、他に客が居るのも構わずにスカートをまくって下着を見せた。
「なんや、スカートめくっただけやったら見えへんやんけ」
旭がニヤニヤしながら意地悪く言うと、佐代は椅子の上で足をM字に開いて股間を見せた。お互いにこれが最後だと思うと、どんどんエスカレートしていくのだった。
「おっ!ホンマや!パンツ濡れ過ぎて、中身の具がくっきり映っとるやんけ!」
「ああん、もっと言うてえ、もっと、ああん」
佐代はもっと言って欲しくて下着の中に手を入れると、クチュクチュと自分のワレメを弄りだした。
「ホンマにスケベな女やのう!オマエ、こんな店の中でどこ弄っとんねん。見てるみんなに聞かせたれ」
佐代にとっては最高のご馳走だった。
「ああん、おめこ、おめこ、気持ちええねん、ああん」
この夜、アキラは幾度も射精をし、サヨは幾度も絶頂を迎えるほど肉欲をぶつけ続けた。陽が昇る頃には2人とも修行僧の様にさっぱりした表情を浮かべていた。
「じゃあね〜」
性欲の満たされた2人はお互いに手を振りにこやかに別れたのだった。