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淫乱家族!C温泉旅館編【新司の母・瞳】 
【複数プレイ 官能小説】

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厨房 旭(アキラ)の事情(旭って誰?)-1

【厨房 旭(アキラ)の事情(旭って誰?)】

「板長―!盛り付け見て下さい!」

厨房で料理の盛り付けを終えた若い男が、中年の板長に威勢よく声をかけた。

「おっ!旭、威勢がいいじゃねえか」

「はい!板長のお陰です!」

「おっ!ちったあマシになったみてえだな」

「はい!今日は特に気合を入れてます!」

旭は自信あり気に応えた。

「バカやろ―!半人前のクセに調子に乗るんじゃねえ!」

いつもの板長の罵声を聞きながら、旭はここ一週間のことを思い浮かべた。



話は一週間前に遡る。

その日、旭は仕事終わりに仲居の佐代を連れ出し、近くの喫茶店へ誘った。しかし、温泉街を歩く道中、旭は黙ったままで、店に入ってからも、中々話し出そうとはしなかった。

「旭くん、今日はどうしたの?怖い顔して」

生真面目な旭に沈黙はよくあることだったが、今日の旭は明らかに様子が変だったので、佐代は自分から切り出して聞いた。

ニコニコと明るい佐代の顔をしばらく見ていたが、やがて旭は絞り出すように言った。

「佐代ちゃん、すまん。オレと別れてくれ」

「えっ…」

佐代にとっては寝耳に水のことだった。年下で生真面目な旭に惹かれ、自分から告白して2年が経つ。

佐代が思った通り、陽気な佐代と生真面目な旭とは性格的に相性は良く、よくしゃべる佐代に対して寡黙で聞き上手な旭は、お互いに無い面を補うことで惹かれあうこととなった。おまけにセックスの相性も良かった。

自分の歳も考えると、そろそろなんらかの形に進展すると思っていた矢先に、その別れの言葉を佐代は容易に信じられるものでは無かった。

佐代はしばらく旭の苦渋に満ちた表情を凝視しながら、旭の言葉を反芻し、高まる動悸を抑えて冷静を保とうとしながら聞いた。

「ど、どうしてなの?」

生真面目な旭は佐代の目線から外すことなく自分の思いを打ち明け出した。

「実は…」

つっかえながらで要領の得ない旭の告白だったが、それを要約するとこんな感じだった。

夢である自分の店を持つために早く一人前の板前になりたいこと。板長から毎日怒鳴られて自分の才能の無さを実感したこと。それでも自分はこの道を極めたいと思っていること。それには今まで以上に修業に集中したいということだった。

自分の店を持ちたいという夢は何度も聞いていた。しかし、普段は佐代の愚痴を聞くばかりで、自分からは一切愚痴を言わない旭だった。それが今初めて苦しい心情ぶつけられた佐代はショックを受けた。

料理人だった旭の父が、友人の保証人になったことで自分の店を手放し、再起の叶わないまま、今でも極貧生活を続けていることや、親孝行な旭が両親を喜ばしたい一心で、自分の店を持ちたいと思っていること。佐代はそれらの表面上のことは知っていながら、旭の優しさに甘えるばかりで、その心内に隠された苦しさまで知ろうとしなかった。佐代は今初めて自分の傲慢さを思い知ったのだった。

告白が終わり、何度も頭を下げて謝る生真面目な旭に対して、佐代の答えは一つしか無かった。

「いいわよ。旭くんは一杯修行をして早く店を持ちなさい。実はあたしもそろそろお年頃でしょ。旭くんが店を持つまで待てないと思ってたのよ」

「へっ?」

「女は現実的なのよ。そろそろ遊びじゃなくて、結婚相手を見つけなきゃって思っていたところよ。丁度よかったわ」

明るく言う佐代だったが、毎日肌を重ねた女のこと、旭はその佐代のウソを見抜けない訳はなかった。それを知っていながら旭はただただ佐代の優しさに感謝して「ありがとう」とポツリとつぶやいて頭を下げるしかなかった。

2人はそれぞれの思いを胸に浮かべて無言のまま見つめ合っていたが、しばらくすると旭は想いを断ち切るように立ち上がった。

(行かないで!で、でもダ、ダメよ、今、声をかけちゃ…)

旭を見上げながら、佐代は寂しさを我慢してグッとこらえた。


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