歪な愛し方-6
涙でグッショリ頬を濡らしていた雅は、波状攻撃のように押し寄せてくる快楽に堪えながら、俺の顔を見た。
絶望でうちひしがれたその顔はさらに俺の下半身を熱くさせ、自然と込み上げてくる生唾を何度も胃の中に押し込める。
「ヒロ、お前パソコン使ったら履歴くらい消しとけよ。おかげでお前の性癖筒抜けだぞ」
兄貴はそう言ってククッと笑う。
「でも、お前の趣味知った時はさすが兄弟だと思ったよ。オレの興奮するツボ全て押さえててさ。女の好みもまるで一緒。多分お前もオレと同じ種類の人間なんだなあってすぐわかった」
「…………」
「ってことはさ、ヒロがこれからしたいことは容易に想像つくんだよな」
兄貴はそう言って雅から離れると、再び俺の横にやってきて耳元で囁いた。
「雅をとことん犯してやりたいんだろ? ちょっともったいないけど可愛い弟のために譲ってやるよ」
その言葉に目を見開いて兄貴を見れば、あの爽やかな笑顔のまま、床に置いていた自分のカバンを拾い上げて肩にかけていた所だった。
ガラッと引き戸の開く音を背後に受け、兄貴が立ち去ったのを聴覚が判断すると、俺はユラリと雅の方を向いた。
「ふ、風吹くん……、これほどいて……」
自由の利かない身体をくねらせながら、雅は恥ずかしそうに呟いた。
金縛りが解けたかのように我に返った俺は、ズッと上履きを引き摺るように彼女の真っ正面に対峙した。
初めて好きになった女。壬生柚香に似た、清潔感溢れる美しい女。
そう、俺はヒールになってこういう女を辱しめてやりたいとずっとずっと思っていた。
助けを呼んでも誰も来ない、そんな状況で女が絶望のドン底に落ちる、そんな姿を見たかった。
互いを求め、愛を確かめ合うようなセックスなんてどうでもいい。
雅の心なんていらない、ただ欲しいのは、彼女が快楽に堕ちていくのを堪えるその姿だけだ。
ガラガラと、自分の中で何かが崩れていくのを感じた瞬間、俺は雅の唇に自分のそれを重ねていた。
「んんっ……!」
突然のキスに、雅は目を大きく見開いたまま小さく唸る。
明らかに俺からのキスから逃れようと顔を背けるけど、そのまま後頭部をしっかり押さえ付けて歯の一つ一つをなぞるように舌を動かしていった。