歪な愛し方-2
凍りついたように固まった俺の身体。
アルバムが落ちてケースが割れた音は、淫らな空間を一気に切り裂いた。
リノリウムの床の上には、たった今放たれた精が惨めったらしく零れていた。
「…………!」
俺と視線が合った雅もまた、涙で潤んでいた瞳を限界まで開いて固まっていた。
剥き出しにしていたぺニスがどうしようもなく情けなくて、視線だけを床に移す。
学校でこんな淫らなことをしていた雅も雅だが、それを見ながらシコッていた俺の方がみっともねえ。
好きな女の前で失態を晒してしまったこの事実だけはどうしようもない。
顔を上げられないまま床に飛んだ精子を見つめてると、
「ヒロ、来いよ」
と、兄貴の声がポツリと聞こえてきた。
だからと言って、ハイそうですかと動ける程バカにもなりきれない。
とりあえず剥き出しのままのアレをしまおうと、ボクサーパンツをずり上げたまではよかったが、手の甲に振り切れなかった精の残りが付着して、惨めなことこの上なかった。
だんだん白みを失っていく果てた跡を、気まずい思いでボンヤリ見つめていたら、視界の端に黄色いラインが入った上履きが現れた。
そしてその上履きの主は、俺の肩をポンと叩く。さっきまで雅の中をかき回していた、その手で。
その瞬間、雅をこんな恥ずかしいカッコにさせて散々辱しめた兄貴に対して、どす黒い憎悪の情が沸き上がった。
たまらず俺は、その手を振り払って兄貴を睨み付ける。
「兄貴……、自分が何やってんのかわかってんのか……?」
「何って……、セックスするとこだったんだけど」
「ふざけんな! 先生、こんなに泣いて『やめて』って何度も言ってたじゃねえか! 無理矢理なら犯罪なんだぞ!」
今にも殴りそうな勢いで胸ぐらを掴んでも、涼しい顔してその薄い唇を微かに歪めるだけ。
「な、何笑ってんだよ」
兄貴の薄ら笑いに、背中が粟立つ。そして奴は、襟首を掴んだ俺の右手を掴むと、
「その泣いてる雅を見ながらシコッてたのはどこの誰だよ」
と、そのまま俺の右手をペロリと舐めた。