第一部 出会い-1
2012年4月6日金曜日午前9時38分、主人公である平凡な顔の男子高校生の神崎真十(かんざきまと)は神田川高等学校の体育館で入学式に参加していた。
校庭の木々には、桜が咲いていた。
入学式には、彼以外にも多くの新入生達が参加していた。
新入生達は皆緊張の表情を浮かべ、物静かに校長の話を聞いていた。
入学式を終えると、真十は自分のクラスの案票を見て、書かれている通り一年G組に向かう。
「G組か…。」
そう囁くと、真十は新入生達が大勢行き来している廊下を通る。
そしてその途中で自分と擦れ違ったショートヘアの美少女の横顔を見て、一目惚れしてしまう。
(かっわい〜。めっちゃ可愛いじゃんあの子…。すっげ〜タイプなんだけど、あの子…。)
彼女に振り向き、顔を赤くしてそう思う。
真十は一年G組の出席番号順に並ぶ自分の席に座る。
(やっぱ知ってる奴一人もいねーや…。)
周りを見渡しながらそう思う。
(ま、それもそうか。この学校に来たの俺だけだし…。)
(えっ?)
その瞬間、彼の視界に窓際に座り、静かに携帯電話を触っている、さっき擦れ違ったショートヘアの美少女の後ろ姿が映る。
(まっ、まじかよ。さっきの子?)
少し嬉しそうにな顔でそう思う。
その時、クラスに一人の担任と思われる男の教師が入って来る。
ショートヘアの美少女はその教師に顔を向ける。
真十はその彼女の可愛らしい端整な顔を見て、心底から喜ぶ。
(よっしゃー!間違いねー、さっきの子だー‼)
真十は入って来た教師よりも彼女に興味を抱いていた。
鼻の下を伸ばし、彼女の顔に釘付けになりながら思う。
(それにしても可愛い子だなー。名前は何て言うんだろー。)
教師はクラスメートに対して言う。
「よーし、じゃあ皆、席に着いてくれるかー。」
クラスメートは黙って、席に座る。
教師は黒板の前で言う。
「全員揃ってるかー。」
空いている二つ並んでいる席を見て言う。
「ん?まだ二人来ていないかー。」
生徒達は小声で話し始める。
真十はショートヘアの美少女を見て、ボケーとしながら思う。
(あんな可愛い子と付き合えたら最高だろうなー。)
ショートヘアの美少女は頬に手をついて、窓の外を眺めていた。
真十は彼女を見ながら思う。
(っつっても、ああ言う子はもう付き合ってんのかなーやっぱり…。
でもそう決まった訳でもねえよな。もしかしたらまだ彼氏いなくて、勿論処女で彼氏募集中…とか…。
ま、何考えても無駄だよな。あんな子が俺なんかと付き合ってくれる訳ねえもんな…。)
その瞬間、教室に入って来る足音が聞こえる。
クラス中がそれに振り向く。
その視線の先には、新たなショートヘアの美少女が入って来る。
彼女は焦った感じで教師に言う。
「すんません、遅れてまいました…。ちょっと迷ってもてて…。」
彼女の口調は明らかに関西弁であった。
その喋り方に生徒達は少しざわつく。
教師は笑顔で答える。
「そうか。まあ取り敢えず席に座ってくれ。出席番号順になってるから…。」
関西弁の少女は言う。
「あーハイ、分かりましたわ、すんません。後後ろにもう一人いますんで…。」
真十は内心で彼女に対する憧れも抱く。
(あー、さっきの子も良かったけど、この子もこの子で良いな〜。関西弁とか反則だろ。
つか俺当たりくじ引いたのかも。こんな可愛い子がいるクラスに入れるなんて…。俺運良いなっ。)
関西弁の少女は後ろに振り向いて、強気に言う。
「速水っ、あんた何しとんねん!早よこんかい、ボケ!」
すると後ろからゆっくりと青色に染まっている髪の目付きの悪いヤンキー風の少年が教室に入って来る。
生徒達は彼の威圧に動揺する。
速水と呼ばれる少年はポケットに手を突っ込んで言う。
「うるせぇなー。」
真十は内心で思う。
(うっそ…。あの子付き合ってたのかよチクショー。しかもあんなめんどくさそうなヤンキーと…。超ショック…。)
関西弁の少女は席に向かいながら速水に言う。
「何がうるさいやアホ!あんたが急いどんのにトイレに寄るから遅なったんやろ!」
速水は適当に答える。
「ハイハイ、悪かった悪かった…。」
「ホンマに分かっとんかいな。」
教師は黒板の前で言う。
「これで全員…見たいだな。よし、今日から皆もこの学校で高校生一年生として生活する様になった訳だ。
俺は皆も想像はしていただろうがこのクラスを受け持つ事になった、国枝(くにえだ)だ。」
そう名乗ると黒板に名前を書き、軽く自己紹介する。
「俺の名前は国枝和(くにえだかず)だ、一年間宜しくな。」
真十は内心で思う。
(へ〜、何か熱血っぽい先生なんかなー。ま、別にどうでも良いけど…。)
国枝はそれから少し余談を挟む。
クラスはそのお陰で生徒一人一人の顔の緊張も少しずつ消えて行っていた。
国枝は言う。
「じゃあまずは…、このクラスで協力して頑張って行くにはお互いを知って、友達を沢山作って行かなければならない…。
言って置くが、俺は苛めをと言う物が大嫌いだ。そんな事を起こさない為にも一人一人に自己紹介をして貰う。」
と言うと、一番最前列の窓際のショートヘアの美少女に向かって言う。
「出席番号順に言って貰うから、君から自己紹介してくれ。」
すると彼女は言う。
「はい。私の名前は綾原神奈(あやはらかんな)です…。一年間宜しくお願いします…。」
国枝は拍手して、他の皆に言う。
「ホラ、皆も拍手。」
他の生徒達は拍手する。
真十は内心で思う。
(へ〜神奈って名前なんだ。珍しい名前だな…。どう書くんだろ…。)
国枝は神奈の後ろの席の生徒に自己紹介させる。
「ハイ、次君。」
そして次々と自己紹介が終わり、真十の順番が来る。
真十は緊張しながら言う。
「えーと、名前は神崎真十です…。で一年間宜しくお願いします。」