いやいやお薬-2
「変なことするつもりじゃないぞ」
布団ごしに、ちょっと拗ねたような声がかけられる。
「わ、わかってるけど……ビックリして……」
「他の国じゃ、あんまり出回ってないからなぁ。フロッケンベルクじゃ、結構よく使……」
ルーディは少し言葉を切り、言いなおした。
「あー、子どもの熱によく使ってる」
「……わたし、もう大人だもの」
「効き目が高くてで副作用もないし、苦いのを我慢する必要もない。ラヴィ、苦いの大嫌いだろ?」
「……」
おそるおそる片目だけ出し、ルーディを見上げた。
お尻に薬を入れられるくらいなら、苦い薬を一気飲みするほうがマシ……と、言いたいが、実はどっちも同じくらい嫌だ。
子ども扱いされても仕方ないと、我ながら思ってしまう。
大きな手には、油薬の瓶と小さな丸薬が数個、所在なさげに乗っていた。
使用法はともかく、一番効果がある薬を選んでくれたのだろうと、ラヴィだって理解している。
「……じ、自分でするから……貸して」
精一杯の妥協点として、布団から手を伸ばしたが、首を振られた。
「初めてなら、自分じゃ上手く入れられないだろ?」
「大丈夫だから!……多分」
「いつも全部見てるんだから、今さら気にしなくても……」
「っ!!あ、あれは……」
いっそう顔を赤くし、ラヴィは再び布団の中に篭城する。
「ああいう時は、違うの!ワケがわからなくなってるし……だから……」
そのうえ少なくとも、そっちをいじられた事は、まだない。
「ふぅん」
コツン、と小瓶と薬をサイドテーブルに置く音が聞こえた。続いて、しっかり包まっていた布団が、凄まじく強い力であっさり剥ぎ取られる。
「ルー……んっ!?」
そのまま唇を塞がれ、いつもよりひんやり感じる舌に口内を貪られる。
歯列をなぞられ、吸い上げられた舌を甘く噛まれると、吐息の温度がいっそう上がっていく。
身体が辛くてしかたないが、いつもより多めに息継ぎを与えられながら、肩や背中を優しく撫でられると、次第に甘ったるい感覚が満ちる。
鼻に抜ける声が漏れ出したところで、ようやく唇を開放された。
「つまり、ワケわかんなくすれば問題ないのか」
とっても悪い狼が笑顔でのしかかる。
「ちょ、うそっ」
逃げようとした腰をがっちり抑えられ、また唇を塞がれた。口腔をなぶりながら、ルーディは片手で胸への愛撫を開始する。
薄い夜着の上から指先で円を描くように突起をなぞられ、硬くとがるよう促される。
控えめだが敏感な胸が、慣れた動きにたちまち反応を始めた。布上から硬くなった乳首を摘まれ、ヒクンと身体が震えた。
「ん……はぁ……だめ……」
押し戻そうとルーディの胸に当てた手はまるで力が入らず、シャツを握るのが精一杯だった。
首筋を舌でなぞられ、止らない胸への刺激に煽られ、全身で息をする。
発熱で熱く乾燥していた肌が次第に汗ばんでいく。
熱で潤んでいた視界がさらにぼやけ、目端から熱い涙が零れた。
薄い長袖の夜着は脱がされず、上から余すところなく撫でられていく。
やめて欲しいのに、何か足りないようなもどかしい気分が次第に高まる。疼く腰が僅かに浮き沈みし、ぎゅっと閉じた両足をこすりあわせるたび、奥から湿った音が聞こえてしまいそうだ、
ひざ丈の裾からするりと脚をじかに撫でられると、高い声をあげてしまった。
「あっ!んんっ……やめ……」
「いくら何でも、最後までしないけど……」
ルーディが困ったように苦笑する。
壊れ物でも扱うようにラヴィを抱き締め、かすかに上擦った声で囁く。
「早くしないと、俺の理性がもたない」
片手でラヴィを抱き締め、もう片手で下着だけを器用に剥ぎ取る。
太ももに手をかけ、大きく開かせたルーディは、足の間に身体を挟み込んだ。
確認しなくても蕩けきった箇所へ、粘つく音とともに指が一本潜り込んだ。
「ふぁっ!だめぇ……」
「すごく熱い……」
耳元で淫靡に呟かれた。
膣奥から蜜を掻きだすように指を動かされ、ラヴィの身体がビクビク痙攣する。枕にしがみつき、背を丸めて下肢から沸く快楽と熱の苦しさに必死で耐える。
愛液でぬめった指で陰核をこねられ、瞼の裏が赤や白に染まる。卑猥な濡れ音と、自分の荒い呼吸が聴覚を満たし、思考が霞んでいく。
「くぅぅんっ!」
喰いしばった歯の間から悲鳴が漏れた。
丸まっていた背を弓なりにそらせ、ラヴィのつまさきがシーツを強く蹴る。
激しい痙攣が治まりきらぬうちに、身体をうつ伏せにされた。
狼になったルーディと繋がる時のように、腰だけを高く掲げる姿勢をとらされる。
ルーディの指がとろけた蜜をすくい、後ろの窄まりにまで伸ばしていく。
「はぁ……ぁ……ぁ」
風邪の熱とルーディに煽られた熱。茹だった頭が反応しきれず、目を瞑りされるがままになっていた。
油薬のかわりに愛液のぬめりを借り、小指の先ほどの丸薬が後孔に押し込まれていく。
つぷん、と自分の身体が一つづつ薬を飲み込んでいくたび、背筋がひきつる。
シーツを握り締め、身体の中で溶けた薬が吸収されるのと、新たな薬が押し込まれる感覚に、身を震わせていた。