相変わらず君は罪な男だな-4
「なら美咲さん………… 美咲さんにとって『我慢』ってなんでしょう?」
「我慢? それは性欲に関する意味での話かな?」
「はい………… 性欲における我慢って何なんでしょうか?」
「それはなかなか………… 難しい質問だわねぇ…………」
僕はずっと風音の言葉が気になっていた。
『みんな我慢が足りないんです!』
『そもそもが我慢しなくていいなんて治療法がっ…………』
風音があんな事を言ったのは僕の体を気遣っての事だと言うのは嘘じゃないだろう。
けれど、ただそれだけのために出た言葉とも思えない。何より風音はその後、
『自分なりになんとかしようと色々と頑張ってはいたけど…………』
なんて言葉を呟いていたのだ。
それはつまり『自分は我慢している』という意味ではないかと考えずにはいられない。
もちろん風音は近いうちに相談しますとまで言ってくれたのだから、
僕はただその日が来るのを待てばいいのだけれど、
それはまた別の話、根本たる我慢は是か非かと言う問題に、
僕は上手く答えられなかった事が気になってしょうがなかったのだ。
「湧き上がる性への欲求を我慢すべきかどうか─── か…………
私と先輩が異なるアプローチで追求してるのはその処理方法だからねぇ」
「はい、なのでこの場合の我慢っていうのは、
その性欲処理に行き着く以前の話になりますよね?」
うつ伏せに寝転んだまま足をパタパタと動かし考え込む美咲さん。
しばらくその体勢のまま何か物思いに耽っていたかと思うと、
ふいに僕の方を向いては、突然こんな事を聞いて来た。
「君はさ、いつごろからオナニーをするようになったの?」
「えっ? な、なんですか急に?」
「いや、性欲に目覚めてそれを処理する術を身につけたのはいつかという話よ?」
「それは………… 多分………… 中二くらいじゃなかったでしょうか…………」
僕が少し照れながらそう答えると、
美咲さんはその様子を見てにんまりと微笑み返した。
「そうなんだ? 和也は中二の頃からひとりで励んでいたんだ…………」
「な、なんなんですかっ もうっ」
「ちなみに私は小四くらいかな? きっかけは月並みだけど鉄棒に跨った瞬間、
得も知れぬ気持ち良さに体がむず痒く感じてしまってね…………
家に帰って誰もいないのを確認しながら下着をずらし指でそっと触れると…………」
「そ、そんな事細かく説明しなくてもいいですよっ!」
性処理カウンセリングとして、ここ花咲女子寮に住む寮生の性処理を手伝う僕だが、
それはあくまでもカウンセリングの一環であり、美咲さんはその対象ではない。
ましてや今は僕がカウンセリングを受けてる立場でもあるため、
いくらなんでもこう堂々と羞恥体験を語られるとこっちが恥ずかくなってしまう。