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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第14話-35

「き、聞かないでっ……嗅がないでっ……お願いですからぁっ……!」
 葵がしているのは、紛れもなく“屁”である。お腹の中に溜まっていた空気が、“立身後背位(立ちバック)”での結合によって更に下りていき、突かれた弾みで葵の“肛門(ア*ス)”から漏れ出てしまったのだ。
「恥ずかしい……いや……いやぁ……」
 セックスの真っ最中に“放屁”をしてしまう…。乙女としてはあまりの恥辱に、葵は小刻みに肩を振るわせ始めた。それは、心の安定を失う兆候でもある。
「だいじょうぶですよ」
 誠治はすぐさま、その背中に覆いかぶさって、葵の耳元に優しいささやきを与える。“放屁”をしたぐらいで葵を嫌うことなどあり得ないし、そもそも、セックスの最中にこうやって葵が“屁”を垂れてしまうことは、珍しいことではないのだ。
(………)
 葵は、“パニック症候群”の罹患者だが、不安やストレスを強く感じると、その症状が顔を出さなくとも、口からの呼吸が必要以上に多くなり、吸い込んだ息をそのまま飲み込んでしまうことがある。その空気が、消化器官をそのまま進行して、大腸内に余分なガスとして溜まりこみ、何かの拍子に“肛門(ア*ス)”から音を発てて、出てしまうのだ。それを、専門的には“呑気症”という。
 “悪夢”を見たことでストレスに晒された葵は、口での呼吸を繰り返していた。そして、吸い込んだ息をたくさん飲み込んで、下腹に溜め込んでしまっていたのだ。
 誠治との激しい交わりが、下腹を刺激してガスを“出口”まで押し込み、堪える間もなく、そのまま出てしまったというわけなのである。
「苦しかったでしょう? 遠慮なく、出してしまうといいですよ」
「ひ、あっ、そ、そこはっ……!」
 誠治の両手が、葵の下腹に優しく添えられる。そして、葵が必要以上に吸い込んでしまった空気を押し出すように、指先でマッサージを繰り返した。
「だ、だめっ、で、でちゃうっ…!」
「いいんです。存分に、出しなさい」
「やっ、あっ、で、でるっ、あっ……で……!」

 ぶぶぉっ、ぶびびびっ!!

「あ………あ……ああ………」

 ぶっ、ぶぶっ、ぶすぶすっ、ぶっすうぅぅぅぅぅ……!

「あぁああぁぁ……」
 葵は観念したように、下半身の強張りを解いていた。それに従って緩んだ“肛門(ア*ス)”から、空気の漏れ出る音が断続的に響き出す。
 誠治はそれを耳に聞きつけながら、葵の下腹に対するマッサージを続けていた。その度に、葵のお尻から可愛くも滑稽な音が鳴り響き、バスルームの中に木霊した。
「………」
 やがて、葵の尻から鳴る音が止んだ。飲み込んだ空気のほとんどを、“屁”として出してしまったのだろう。
「スッキリ、しましたか?」
「…………はい」
 誠治の言葉に、素直に答える葵は、愛する人の前で“放屁”をした自分の無様な様子を、受け入れているようだった。
(そう。気にすることは、何もないのです)
 セックスの最中でなくとも、何かの弾みで葵が“放屁”をすることは良くあったし、誠治も耳にした。誠治の前でそれをしてしまったときには、決まって恥らいに顔を真っ赤にする葵のことを可愛く思ってきたものである。
(葵くんのは、それほど匂いませんからね)
 純然たる“菜食主義者(ベジタリアン)”ではないが、葵はほとんど肉食をしない。昨夜も、ポテトスープと大根野菜サラダがメインディッシュだったから、いま葵が垂れた“屁”には、よくある強烈な匂いの根源となるような成分は含まれていなかった。


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