陰と陽 -3
優里が好きになったのだから自分もきっと好きになる…、今までの事を考えるとそんな気がした。その思い込みが自らを罠に進ませてしまう。絵里の中で武史の存在が大きくなる。あそこまで自分に興味がないと言われると振り向かせたくなってしまう。
(湯島君を振り向かせられなきゃ優里に追いつけない。)
あくまで肩を並べなければどうも落ち着かない絵里。それでなくても結婚で先を越され焦っていた為、優里の旦那である武史を振り向かせる事で同等を保てる、そう考えた。
学校が一度も同じになった事がない自分は不利だ。武史と関わった時間が圧倒的に少ない。かと言って武史の家にいけば優里もいる。2人だけになれる時間が絵里には必要と感じた。絵里は本気だった。
ある日、絵里は勤務を終えると武史の会社の近くで待ち伏せをする。通常19時に仕事を終える事はリサーチ済みだ。そしてその頃、いよいよ武史が会社から出てきた。武史の正面から歩いて行く絵里。ふと顔を上げた武史はハッとした。
(優里??い、いや…あれは絵里だな。マジかよ。何のつもりだ?)
突然な事に驚いたが、優里だと思ってる事にしようと考えた。
「あれ??どうした優里?約束してたっけ??」
自然に振る舞う。
「違うよ〜!絵里だよぅ。」
「絵里ちゃん!?」
「うん。」
「マジ?絵里ちゃんか!全然分からないや、やっぱ。」
「旦那さんでも分からないかぁ。」
「アハハ!分かんないや!でもどうしたの??」
「ちょっと家庭訪問してきた帰りなの。湯島君の会社ってここらなんだぁ。偶然〜!びっくりしちゃったぁ!」
「俺もだよ!マジで絵里ちゃんか?優里じゃないよな??」
「え〜?自分の奥さんかどうかも分からないなんてダメじゃなぁい?」
悪戯っぽく笑う絵里。
「ゆ、優里には内緒な?絵里ちゃんと間違ったって言ったら殺されるからね…」
「うん、言わない言わない!」
「頼むぜ〜?」
2人は駅に向かい歩き出した。
(この女、釣れたな!)
確信を得た武史。絵里の肉便器化計画が始まった瞬間だった。