鉄格子の向こう側 *性描写-1
ひたすら熱くて、自身まで燃え尽きてしまいそうだった。
視界には常に黒いものが入り込んでいた。
自分の目が焼き殺したそれは、熱風に砕け散って行く。
ここがどこか、何を焼いているのか、自分が誰なのかもわからず、ただ炎を放ち続ける。
『もっと焼きつくせ、その目に無数の死を焼き付けろ』
この苦しさから逃れたくて、誰かの命じるまま、黒焦げの死を作り続けた。
燃えそうな肺腑に空気をいれかえようと、大きく口を開ける。
熱風に砕けた灰が、口に飛び込んできた。
ジャリジャリした感触と苦味……。
死の味は、まずかった。
焼き尽くし続け、視界に動くものが何もなくなり、そこで力尽きた。
焼けた地面に張り付き、ぼんやりと薄目を開けていた。青銀の鱗に覆われた自分の腕が視界に入る。
鉤爪がピクピク痙攣していた。
――あ……俺、生きてんだな……。
次に気付いた時は、海底城の実験室で、ベッドに寝かされていた。
埋め込まれていた数々の知識で、自分を覗き込んでいる男が、造り主のツァイロンだと知っていた。
「ようやく魔眼の制御に成功したぞ。ミスカ。お前が初めての成功例だ」
嬉しそうなツァイロンの隣りで、他の主が苦笑する。
「小国といえ、国一つ丸ごと焼き尽くして、やっと満足か。とんでもないバケモノだ」
言われている事がよく理解できないまま、のろのろと上体を起こす。
近くの壁に大きな姿身があり、青年の姿をした自分が写っていた。
瞳は金色で、青銀の髪は長く編まれている。
病衣から除く腕に、青銀の鱗は残っていなかった。手も普通の人間だ。
呆然としていると、食事の乗ったワゴンが運ばれてきた。
「嬉しいだろう。栄養剤以外、初めての食事だ」
ツァイロンに促され、皿の上に乗ったパンや切ったリンゴを口に入れてみた。
(……まずい)
パンもリンゴも……初めての食事はどれも全て、灰の味だった。苦くてまずい死の味。