鉄格子の向こう側 *性描写-12
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……とはいえ、ツァイロンはひたすら用心深く、命のかけらの保管部屋は、滅多に開かれない。
なかなか機会に恵まれず、ミスカが自室で次の手段をあれこれ模索していた時だった。
「はぁ〜い❤おひさしぶりぃ!」
けたたましい声とともに、ミスカの部屋へミュリエルが飛び込んできた。
普段はジェラッドにいる彼女だが、時おり海底城に戻ってくると、ミスカの部屋に必ずくる。
あまりのうざったさで、他の実用タイプから避けられまくっているミュリエルに、どうやら妙に気に入られてしまっているようだ。
「見てみてぇ〜❤ジェラッドでカスを捕獲したらね、主さまがご褒美にくれたのぉ❤」
首にかけた真珠の豪華なネックレスを指でつまむ、催促顔のミュリエルに、気のない相槌をうつ。
「あー、うん。似合ってんじゃねーの」
別にどうでもいいのだが、褒めるまで帰らないだろう。
満足したらしいミュリエルが、ポンと両手を打ち合わせる。
「あ!そうそう、エリアスって結構可愛いわよねぇ❤」
「……は?」
基本的に、誰だろうと見下しまくっているミュリエルから、意外なセリフが飛び出て耳を疑う。
「今回の捕獲でも、なかなか使えたしぃ、玩具に欲しいってぇ、主さまに今度おねだりしてみよっかしらぁ❤」
「エリアスに手ぇ出したら、化粧を残らず溶かし落とすぞ」
寝台に寝転んだまま、厚化粧の顔を睨む。
水さしから触手を持ち上げ、警告に降ってやると、ミュリエルは青ざめて後ずさった。
「ひっどぉぉい!最低男!!鬼畜!!サディスト!」
「……お前にだけは、言われたくねーな。それから下着くらいつけろ」
仰向けに寝転んだミスカから、前面だけ極端に短いスカートの中が丸見えだ。
「いやん❤触らせてあげないわよ」
くねくね脚を擦り合わせるミュリエルに、冷たい視線を向けた。
まったく、いつみても幸せそうなヤツだ。
「お前は大事な奴なんかいないんだろうな」
「失礼ねぇ!ちゃぁんといるわよぉ」
頬をふくらませ、ミュエリエルは抗議する。紫の唇をにぃっと歪め、ミスカに一歩近づいた。
「ミュリエルはぁ、世界でいっちばぁん、ミュリエルがだいすきぃ!❤❤❤」
高々と宣言し、ついでに小さな手鏡まで取り出し、うっとりと眺めている。
「……そんなこったろうと思ったよ」
脱力しかかったが、ふと気付く。
ミュリエルの主は、このけたたましい作品を溺愛していて、やたらこまめに検診をうけさせるのだ。
「なぁ、ミュリエル。せっかく来たんだ。ついでに検診も受けるのか?」
「あ❤そーなのぉ。最近ちょっと、お肌の調子が悪くってェ。あと少ししたら時間が空くからって、主さまがぁ……」
「はいはい。そんじゃ、早く行ってこいよ」
ミュリエルの背中を押して、部屋から追い出した。
もちろん白いのドレスのフリルに、水触手を1滴、こっそりつけて。