一日彼氏-1
***
一学期最終日。明日から夏休み。
結局あのあと、学校やマンションで先輩と会っても上手く会話できず、ぎくしゃくした関係になってしまっていた。
明日から夏休みだっていうのに、憂鬱だな。これから先も先輩とはこのままなのか……。
「生徒会役員の諸君。明日からいよいよ夏休みだ。楽しみだろう?」
俺の気持ちも知らずに、会長がなにやら意気込んでいる。
それに対し、
「くく、楽しみなわけがなかろう」と橘。
「何人の女とできっかな〜」と近衛。
「親が夏期講習受けろってウルサイんだよな……」と前田。
「「…………」」と無言の俺と先輩。
「三年の俺と銀河は、夏休みが終わればすぐに引退してしまう」
あ、そっか。三年生は九月までで、十月からは先輩と今みたいに会えなくなるのか……。
「そこで。思い出作りという名目で、俺たち生徒会で水着の女の子がたくさんいる海に行くことになった。やったな!」
会長すげぇ嬉しそう。
「期間は八月七日から二泊三日だ。当日の集合場所と時間は、追って連絡する。ああそれと、来期から生徒会役員となる一年の銀河、じゃややこしいな。銀河の妹さんも参加する。何か質問は?」
え?銀河先輩の妹って、杏ちゃんのことだよな?杏ちゃんが来期から生徒会役員だって?そんなの初耳だぞ。
「ないみたいだな。では解散!」
***
八月一日、正午過ぎ。
俺は所属している放送部の用事のため、学校に来ていた。なんで休みの日にこなくちゃいけないんだろうな。
「佐藤先生、こんな感じでどうです?」
放送部顧問の佐藤先生――もうすぐ三十路になる独身の女性。可愛いんだけど色っぽさが足りない――に、新入部員獲得用の宣伝ポスターを見せた。この時期に新入部員ってのもどうかと思うが。
「おっ、かっこいい!でも『放送部のポリシーは納豆を残さない』ってのはいらないかな〜」
「あー。それ書いたの部長です」
「まぁいいけどね。他はちゃんとできてるし。ありがと、みんなに帰っていいよって伝えておいて」
いいのか?これじゃ入部したくても納豆嫌いの人は入ってこないんじゃ……。
「了解です」
***
放送部に帰るよう伝えた俺は、帰ろうとして『その音』に足を止める。