初デートは秋葉原-2
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「どーしてどこにもDBないのー」
四件ほど店を見て回ってみたが、その四件ともDBのゲームは売り切れてしまっていた。
そんなわけで疲れた俺たちは、有名なファーストフード店ドナルナクマ――通称『ドック』で昼食がてら休憩していた。
「もういっそマアゾンにしちゃおうかな」
そう呟きつつケータイを弄る先輩。
「初回限定版はっと……二万!?」
先輩が急に大声を出したので、俺たちは周囲の視線を浴びてしまう。
「プレミア価格ついてる……一応通常版も……一万!?ぼったくりじゃん……」
気にせずぶつぶつと一人言を言う先輩。
「無理……」
どうやらネット通販ではプレミア価格がついてるらしく、先輩はため息をついてハンバーガーにかじりついた。
俺は片手でコーラが入った容器を持ち、もう片ほうの手でケータイを弄る。
『昨日発売したデビルビーツのゲームって持ってたりする?』
そううちこみ、橘にメールを送信する。
「……大神くん、か、彼女とデートしてる時にケータイ弄るなんて、失礼なんじゃないの?」
さっきまで弄っていた先輩がそんなことを言ってきた。
「すいません。ちょっと橘とメールを」
「しかも他の娘とメール!?大神くんは私のことすっ、好き、なんだよね?」
「はい。好きですよ」
一度想いを伝えたからなのか、すんなり『好き』と言えたことに自分でも驚く。
「先輩は俺のこと好きですか?」
「えっ!?そ、それは……に、偽物なんだし、好きなわけないでしょ!?」
うーむ。中々素直になってくれないみたいだ。
『当然であろう?ウルフも興味があるのか?くく、ようやく貴様も特異点になったようだな』
橘からの返信メール。後半はよくわからない。
「またメールしてるの?」
「はい」
当たって砕けろ。ダメ元で譲ってくれるように頼んでみるか。
『よかったら俺に売ってくれない?』
送信すると、すぐさま返事が返ってきた。
『我の生涯の伴侶になるというのなら、特別にただで譲ってやろうぞ』
なんだそれは。橘と結婚すればってことだよな?先輩のために橘と結婚って……本末転倒じゃないか。
返信はせず、俺はケータイを閉じてストローを吸う。