想いの行方-7
自分ではセックスを何度もしてきたくせに、他人のそれを目の当たりにする機会なんて初めてだ。
とは言え、まだ中の様子を確認してないのだが。
中の女は、引き戸の向こうに俺がいるなんて気付いていないようで、ひたすらにイイ声で鳴きまくっていた。
「ああっ、あっ、いやあ……ああ、あ……」
俺好みの可愛い声に、脚の間の熱はさらに上昇していく。
不思議なもんで、声が可愛いとその主の姿も可愛いものを想像してしまう。
ましてや兄貴が選んだ女なら相当レベルが高いに違いない。
美人のゆかり先輩ですら相手にしなかった兄貴が抱く女は一体どんな奴なんだろう。
他人のセックスに対する好奇心、兄貴が選んだ女に対する興味、そしてどうしようもなく熱を持った俺のぺニス。
それらが集まれば、このまま知らんぷりすることなんて到底できる訳もない。
もちろん罪悪感はあるのだが、他人のセックスを眺めるなんて、そうそうあることじゃない。
俺の手は自然とカチャカチャベルトを緩め始める。
服のスラックスのボタンを外すと、すでにガチガチにそれは硬くなっていた。
その肉塊を握りしめながら、そっと中の様子を窺うけれど、二人の姿は見えない。
「やっ……、は……も、もうダメ……」
聞こえてくるのは声だけ。
くそ、どこでヤってんだ?
音を立てないように引き戸をもう少し開け、ソロリと足を踏み入れる。
四人がけの白くて大きな机が9つ並ぶ教室内は、誰もいないいつもと変わらない風景。
「ああっ……、ああん、あっ……いやあ……」
そして聞こえてくる、女の喘ぎ声という異質なもの。
教室に入るとそれはいっそう耳に響いて、ますます下半身が膨張していった。
その声は美術室の奥、――パーテーションの後ろから聞こえてくる。
そうか、あそこだな。
俺は、生唾をもう一度飲み込んでから、足音を殺して声のする方へ近づいた。