秘密と偽物-2
そりゃ驚くって。このアニメDVDが先輩のだってことにはもちろん、遅ればせながら先輩が俺の部屋にいるなんて明日槍でも降るんじゃないか?ぐらいの奇跡なんだから。
「先輩もアニメとか見るんですね」
「う、うん。き、気持ち悪い……?」
こちらの表情を窺いつつ訊いてくる先輩。
「そんなことはないですよ。というより、先輩こそアニメとか気持ち悪いって思ってるのかと思ってました」
「ん、なんで?」
「橘が苦手みたいだったので、そうなのかなと」
「苦手っていうか、ら、ライバルだと思ってるけど、好感は持てるよ」
「へぇ」
なんか意外だな。アニメもそうだけど、先輩って橘みたいな中二病が好きだったのか。
「ね、ねぇ」
「はい」
大分落ち着いたので、俺はようやくベッドに腰をおろした。先輩との距離が近いぃぃぃ!
「これは私たちだけの秘密よ」
俺の目を真っ直ぐ見つめ、真剣な表情が間近に迫る。
顔
が
近
い
Y
a
h
o
o
!
「こ、これとは?」
「私がアニメ好きなこと。高校生にもなって、恥ずかしいじゃない」
「そうですか?」
姉ちゃんも普通にアニメ見てるから、俺はそのへんの価値観鈍ってるのかもな。
「とにかく秘密だから!そ、その代わりなんでもひとつだけ言うこと聞いてあげる!」
な ん で も
「あ、えっと、エッチなのはダメだからねっ!?」
「……なんでもって言ったじゃないですか」
「エッチな命令だったら絶交するよ!」
「し、しませんよ」
『おっぱい揉ませてください』はダメか……。キス、はどうなんだろ?
いや待て。キスはデートの最後だろ。でもデートじゃあな……。
「それじゃ」
俺はベッドから下り、先輩に土下座した。
「な、なに!?」
覚悟を決め、俺は先輩に気持ちを伝えることにした。
「先輩のことがずっと好きでした!偽物でもいいので付き合ってください!」
***
「お姉ちゃんどうだった?」
私はさして期待もせず、行動力のない姉に結果を聞いてみた。
目と鼻の先にある大神先輩の家に向かってたったの三十分で帰ってきたのだ。予想するに、目当てのDVDを返してもらったはいいものの、大神先輩のお母さんに捕まったとかそんなところだろう。
「にぇへへ」
姉の気持ち悪い笑みに、一瞬だけ期待を膨らませてしまった。