告白2-11
私は震える手を、そっと彼の背中にまわした。
ガラにもないことをしている自分が恥ずかしくてたまらなかったけど、このまましばらく時間が止まって欲しくて、すがるように腕に力を込める。
それほどこの場所は居心地が良かった。
……なのに。
ぎゅるるるるるう。
咄嗟に土橋くんからバッと離れ、慌ててお腹を押さえる。
何もこのタイミングで鳴ることないじゃない!
自分の体のデリカシーの無さに顔から火が出そうだった。
「ホント、色気のねえ奴」
彼は苦笑いを浮かべ、私を見た。
「だ、だって……お昼から何も食べてなかったんだもん」
私は真っ赤になりながら自分の腹時計に心の中で舌打ちした。
「じゃあ、さっきのコンビニ戻ってなんか買うか?」
“コンビニ”と言われ、忘れ去られていたベンチの上のレジ袋に目を移す。
石でできたベンチには、私が置いたレジ袋と彼が飲み干した缶コーヒーが、寂しそうに佇んでいるように見えた。
「あ、さっきお茶とチョコ買ってたんだ!」
私は、冷たいベンチに座ってガサガサとレジ袋を開けた。
「……あれ、そのチョコ……」
ビニールの包装を剥がしている私の手元を見ながら、彼は眉をひそめた。
「前に、売り切れるわりに大して美味くないって話してたヤツだよな? なんでわざわざそんなもん買うんだ?」
「それは……」
包装を剥がして、いざ中身を取り出そうとした手が止まる。
「これ……私にとって思い出深いものだったから……コンビニで見かけた時、つい土橋くんのこと思い出して買っちゃったんだ」
私は、なんだか気恥ずかしくて小さな声で呟いた。
彼は、キョトンとした顔で突っ立ったまま、私の言葉を待っていた。