はじめての、えっち。-6
「自分の気持ちも、はっきり伝えることができないなんて、そんな相手と一生やっていけるの?」
「うう……」
「それに、一度もエッチしない夫婦なんていないでしょうが。そんなに嫌なら、結婚もやめちゃえばいいじゃない。わたしが代わりに、もらってあげる」
ずきっ、と胸が痛んだ。
エッチも困るけど、とられるのはもっと嫌。
涙が、ぼろぼろと溢れてくる。
「な、なんでそんなこと言うのよぉ……うっ……ひ、浩紀は、わたしの、なんだからぁ……」
「あははは! ちょーっと、泣かないでよ。冗談、冗談だってば。誰があんな、千春一筋の童貞を相手するかって」
「あ、秋絵は……」
「ん? なに?」
「エッチ、したことあるんだよね? その……どんな感じ?」
「どんな……って、うーん、痛かった、かなあ……」
遠くを見るような目をして、秋絵がつぶやく。
「い、痛いの? そうなの?」
「千春、食いつきすぎ。まあでも、最初だけよ。すぐにそんなの忘れて、毎日やりまくりたくなるから」
「だから、下品なこと言わないでってば!」
ピンポン、と玄関チャイムが鳴った。
ふたりで顔を見合わせる。
「来たよ、ほら。行っておいで」
「だめ、ほんとにだめ!」
秋絵に腕をつかまれて、無理やり玄関まで引き摺られた。
扉が開くのを待ちかねたように、浩紀が息を弾ませて飛び込んでくる。
「チイ! 遅い時間だったし、家にもいないから心配で……ああ、よかった」
「ちっともよくないってば。あんたたちのせいで、こっちは明日も早いのに、睡眠不足になりそうよ! さあ、帰った、帰った」
秋絵がぞんざいな口調で、突き放したように言う。
「ごめんな! 今度また飯でもおごるよ……チイ、帰ろう。送っていくから」
「う、うん……」
やっぱり、顔を見ることができなくて、下を向いたまま、千春はぼそぼそと答えた。