告白1-2
私が一番最後に改札口を通り抜ける頃には、人影はもうほとんどなかった。
初めて降りた、彼がいつも使っている駅。
私の住んでいる所も田舎だけど、ここはもっと田舎で寂れていた。
駅前はシャッターが閉まった店ばかりだし、街灯は少ないし、まだまだ寒いせいか歩いている人もほとんどいない。
小さな駅だからか車通りもほとんどなく、まだ夕方なのにやたら静かだった。
右も左もわからない私は、この街のあまりの活気の無さに急に不安になり、とにかくコンビニみたいな明るいお店が恋しくなった。
とりあえず駅前のロータリーを抜け、なるべく大通りを歩くことにしよう。
どうやって土橋くんに会おうか考えながら、人気のない大通りを歩く。
彼に電話をかけるしか方法はないのはわかっているけど、いきなり電話する勇気はなかなか出なくて。
彼にだって私の知らない生活スタイルがあるわけだから、もしかしたら友達と遊んでいるかもしれないし、何か用事があって会えない可能性だってある。
いろいろ考えているうちに、勢いだけでここまで来てしまったことを少し後悔した。
結局私はコンビニを探すまでの間にしたことと言えば、携帯に土橋くんの電話番号を表示させては消し、を繰り返しただけ。
駅から歩いてわりとすぐにコンビニは見つかった。
知らない土地でも、見慣れたコンビニの店構えを見つけるとホッとする。
安心して気が緩んだのか、自分が夕飯も食べずに家を飛び出してきたことにようやく気付き、お腹が盛大に鳴る。
とりあえず何か食べてから彼に電話しよう。
そう決めた私は、煌々と明るいコンビニの中へ入った。
店内はおでんのダシの煮詰まった匂いが充満していて、私のお腹の虫を刺激する。
体が暖まるし、おでんにしよう。
私はそう決断すると、とりあえずお茶のペットボトルをカゴに入れ、お菓子コーナーの前を通ってレジに並ぼうとした。
その時、ふとお菓子コーナーの前で立ち止まる。
彼と絶交した日、最後に一緒に食べたあのチョコレートが目に入った。
―――俺んちの近くのコンビニだよ。田舎だから結構売れ残ってたぞ。
以前、彼が私に得意気に話した言葉が蘇る。
もしかしたら、アイツの家ってここから近いのかな。
コンビニはここだけとは限らないのに、なぜか緊張してきた。
変にドキドキしながらも、このチョコレートのパッケージを見ると、ふと懐かしい気持ちもなぜか同時にこみ上げてくる。
あの頃みたいに笑い合いたい、そんなことを考えながら、私は気付いたらオマケ付きのチョコレートをカゴに入れていた。