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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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28 弱者の抗い (性、残虐注意)-5

「嘘だ……嘘だ……マウリさまは、いかなる時にも高潔で……」

 血の気が失せた顔で、騎士がブツブツと呟く。
 しかし傭兵たちは、もうショックを受けている騎士など、どうでも良いらしい。
 身をよじるエリアスを押さえつけ、文官服を止める銀ボタンを引きちぎる。ロープで圧迫された乳房が弾み出て、張り詰めていた布が捲くれあがる。
 先端を薄桃色に色づかせる、真っ白な柔らかい膨らみを揉まれ、エリアスは顔を背けた。

「もう……十分でしょう?そんな人に忠誠を誓うなんて……やめてください……」

 震え声で訴え、身体をよじる。無力な抵抗は傭兵たちの劣情を掻きたて、警戒心と理性を薄れさせる。
 乾いた音とともに、頬を軽くはたかれた。

「雇い主がド変態だろうと堅物だろうと、賃金さえ貰えりゃどうでもいいんだよ。切れ者って噂のわりにゃバカだな」

「黙ってりゃ殺されるだけで済んだのに、てめぇで蒔いた種だ。黙っておとなしく犯られな」

 獣と化した男たちが、あざ笑いながら身体をまさぐっていく。
 エリアスの思う通りに、踊らされているとも知らずに。

 手足を拘束され、魔法を使うこともままならない、敵に囲まれた状態でも、いまさら絶望など感じない。


 海底城で、いつだってエリアスは独りだった。
 つまらない失敗作。弱弱しい玩具だった。
 仲間の使用人達でさえ、自分たちを楽しませない性玩具など、粗悪品だといたぶった。
 悔しくて悲しかったけれど、残酷で正直な海底の城は、弱者は喰われて当然と、はっきり教えてくれた。

 無力を嘆く暇があったら、無力でも勝てるよう考えろと学んだ。
 気の進まない方法だが、このまま殺されるよりマシだ。
 

 傭兵が邪魔になったナイフを、エリアスに届かない位置まで投げ捨てた。鈍い銀の刃色が、ミスカの髪を思い出させる。
 肌を撫でる手に嫌悪感が増し、ズキリと心臓が痛んだ。

――やっぱり、ミスカは最悪だ。

 むせび泣くほどの快楽や、我を忘れるほど蕩けてしまう感覚。そんな甘い味を知ってしまったから、この行為がいっそう辛くなる。
 ミスカの手はもっと滑らかに動くとか、どんなに強引でも絶対に殴ったりしないとか、必ず抱き締めてくるとか、そんな事をつぎつぎ思い出す。
 気付けばいつのまにか、ミスカが基準になっている。

(逆でしょう……ミスカは……)

 必死で自分に言い聞かせる。
 ミスカは基準でなく、特別なのだ。
 失敗作の性玩具を熱心に蕩かす変わり者など、海底にも地上にも、一人で十分だ。



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