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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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28 弱者の抗い (性、残虐注意)-4


「はぁ!?」

「ああ、ひょっとしたら貴方の信頼を失いたくないからこそ、逃げた愛人を私怨で追い回しているなんて、隠しているのかも……」

「デタラメを言うな!」

 怒りに顔を赤くした騎士がわめく通り、真っ赤な嘘だ。
 愛人どころか、会話したことすらない。

 それでも身辺調査をしていれば、マウリの人物像は容易にわかる。
 良く言えば潔癖で高潔。悪く言えば独善的で融通が効かない。
 特に女色に関しては過剰に潔癖で、部下にもそれを押し付けていたらしい。
 そして少数だが、マウリを熱狂的に支持する部下がいるのも調査済みだ。
 アレシュを絶対悪とする論理は、一見筋が通っているようにも見えるし、カリスマ性にも恵まれた有能な男なのだから。

 騎士が怒り狂う一方で、傭兵二人は明らかに面白がっていた。

「どう見ても男に見えるぜ。なんなら剥いてみるか?」

「女に戻るには、呪文の詠唱が必要ですよ。そんなくだらない証明をするために、指を無くすのは御免です」

 縛られたまま、軽く肩をすくめてみせると、傭兵たちは大笑いした。

「口が上手い兄ちゃんだ」

「けどな、その手にゃ乗らねーよ。雇い主が女々しかろうが、金さえ貰えりゃ良い」

 陰気な地下室に籠もっているうえ、ヨランの狂気に辟易した所だ。
 エリアスの望み通り、傭兵たちは余計な軽口を叩いてくれる。

「女々しいとはなんだ!コイツのデタラメを信じる気か!?」

「信じるとは言ってねーよ。もし本当なら笑えるってだけだ」

「マウリ様を侮辱するな!!」

「ハイハイ。だから俺たちは、どっちだって良いんだよ」

 彼らが高圧的な若造に好意を持つはずもなく、仲間と言っても利害に基づいた薄氷の関係だ。騎士が怒れば怒るほど、愉快だろう。
 すっかり頭に血が昇った騎士が、床に倒れているエリアスの喉元へ剣を突きつける。

「いいだろう。本当に女だと言うなら、呪文の詠唱でもなんでもしてみろ」

「おい……」

 さすがに止めようとした傭兵を、騎士は血走った目で睨みつけた。

「下がれ!!俺は魔力こそ低くとも、呪文の類は一通り知っている。攻撃魔法でも唱えようとしたら、即座に斬り捨てるからな」

「……結構ですよ」

 微笑みを浮べ、エリアスは女体に戻るための詠唱を始める。
 地上にしか生きない騎士は、始めて耳にする呪文に疑いの顔を向けていたが、やがてその表情が強張った。

 服の上からきつく縛られているため、エリアスの身体が明らかに変化していくのが、誰の目にも一目瞭然だ。
 くびれた腰や、細くなった足首を拘束するロープは揺るみ、逆に上体を縛っていたロープは、大きく張り出た胸を絞りだすように、上下へ窮屈そうに押しのけられる。

 異性を楽しませる目的に造られた肉体は、拘束されている事でよりいっそう淫靡な雰囲気をかもし出す。

「すげぇ……」

 傭兵達が生唾を飲み込んだ。

「おい、ちゃんと脱がせて確かめさせろよ」

「やめ……っ!」

 無骨な手が胸元に伸びてくるのを、身体をくねらせ抗うフリをした。よりいっそう欲情を煽るべく、眉を潜め適度な嫌悪を浮かべる。

「止めてください!こんな風に縛られると……マウリの愛人だった頃を思い出します」

「へぇ?あのお堅いマウリさまも、結構イイ趣味してたとはなぁ」

「何が良いものですか。あまりに変態じみた扱いをされるので、わたくしは愛想を尽かしたのです。鞭で叩くのも叩かれるのも、もうこりごりですよ」

「ひゃははっ!マジかよ!」

 本人が聞いていたら、怒りに卒倒しそうな嘘のオンパレードだが、特に罪悪感は感じない。
 こっちは命がかかっているのだ。
 変態呼ばわりされたくらいで、マウリに怒る権利などない。




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