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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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26 波乱の建国祭-5


 無礼極まる発言に、カティヤの我慢が限界を超えた。

「行くぞ、ナハト!!あの舌を串刺しにしてやる!!」

 鞍につけてあった槍を掴みとり、兜を直す。
 いくら正気を失っていても、バンツァーを傷つける気はないが、あの無礼な犯罪者へ斬りかかるのには、寸分の迷いもなかった。
 あの男がストシェーダでどんな罪を犯したかなど知らない。
 しかし、この国でやった事ははっきりしている。
 ユハ王を嘲り、建国祭を踏み荒らし、ジェラッド国全体を侮辱した。飛竜たちを穢し、兄を始め多数の人へ大怪我をさせた!!
 万死に値する罪だ。

「お前ごときが、バンツァーを乗りこなせるものか!」

 飛竜使いたちでさえ、パートナー以外の飛竜は乗りこなせない。
 互いの信頼があってこそ、飛竜と竜騎士は全力を出せるのだ。
 猛風の中、カティヤは槍を構えて突き出すが、バンツァーが絶妙に身を逸らし、マウリを守った。

「あっ!?」

 怒りに任せた一撃が逸れ、がら空きになった横腹へマウリの剣が襲い掛かる。
 とっさに両手を手綱から離し、左手で腰の剣を半分引き抜いて防いだ。
 しかし不自然な体勢で受け止めるには、重すぎる剣撃だった。
 バランスを崩しかけたところへ、バンツァーの長い尾が鞭のようにしなり、ナハトをしたたかに打った。

「きるぅぅ!!!」

 衝撃で両手を離していたカティヤは宙に投げ出され、ナハトは見張り塔へ叩きつけられる。

「きゃああぁ!!」

 空中を落下するカティヤの身体へ、マウリが剣の柄を向ける。
 魔道の杖も兼ねていたらしい剣から、銀色の光が走りカティヤの全身に激痛が走る。
 喉から絶叫がほとばしった。
 マウリに足首を掴まれ、地面へ激突は免れたが、意識が遠のきかける。
 兜が外れ、はるか下の地面まで落ちていく。

 上空で逆さ吊りにされ、痛みと怒りに強張った空色の瞳が、大きく見開かれた。
 天地逆さに写る光景に、王都へ押し寄せる青黒い波が見える。
 それが無数のリザードマンと気付いた瞬間、剣の柄を背に押し当てられ、再び激痛が全身に走る。
 完全に気を失う寸前、憎しみの籠もったマウリの声が聞えた……

< 竜姫が楽に死ねるかどうかは、貴様しだいだ。大人しくついて来い。大罪人アレシュ・ヤン・ストシェーダ!!! >


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