竹中君とのデート@-4
「どうしたの?」
「恥ずかしいから…」
「僕たち、相思相愛じゃないか。愛を確かめ合おう」
「誰かに見られてる気がするの」
紗綾はさきほどから誰かの視線を感じていた。
「えっ? あの二人はこっちを見てないよ」
紗綾は竹中の肩越しに左手の方を見た。大きな松の木の陰からこちらを窺っている女性の姿がチラッと見えた。女子高生だ。
(あれは美和さんでは?)
養父・新田勝雅の娘、美和ではないかと思った。
こちらの様子を窺っていた制服の女子は踵を返して、公園の入口に向かって駆けていった。
「竹中君…わたし帰るわ」
ベンチから立ち上がったが、竹中は紗綾のセーラー服の袖口を掴んできた。
「帰ってほしくない。好きだから」
竹中は切なげな声を出した。紗綾の手首を掴んでいる指に力を込めてきた。
(こまったわ…)
困惑しながらもふたたびベンチに腰掛けた。