三角の真実-3
次の日。
俺と明莉は、新幹線の中、一言も会話せずに座っていた。
昨日の夜、全てを話した。
電話ごしだったから、明莉が何を考えていたのかなんて分からない。
ただ「分かった。」と言って明莉は切った。
窓の外を眺める明莉。
きっと怒っているだろう。
でも今日来てくれた。それだけでいい。
もう、きっと明莉とは縁をきられてしまうだろう。
明莉には酷いことをした。俺は本当に最低な男なのだ。
でも、このまま隠しておくなんて、絶対に嫌だった。
数々の思い出を胸に。
俺たちはそれぞれの想いを抱えながら、ただ生きていた。
「圭一。」
「おう、隆太。来てくれてありがとな。……ん?後ろに誰か………………!?」
俺の後ろに隠れていた明莉が、背中から顔を覗かせる。俺の服の裾を掴む手が、か弱く震えていた。
「あ………明莉!?」
「………。」
「隆太!お前、余計なことを………!」
「ごめん、圭一。明莉には、全て話した。」
「……………ふざけんな……。」
そして、圭一は力なくうなだれる。
そして、悔しそうに言った。
「明莉……あんなことして、本当に………ごめん……。」
どれだけ沈黙があっただろう。
明莉が口を開いた。
「あんたたちがやったことは、許せない。……でも……。圭一はアメリカへ行くんでしょ。だから、もう、忘れてあげる。圭一、今までありがとう。楽しかった。」
圭一の目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
そして、それは明莉にも伝染して、最後には俺にも伝染する。
3人は、ただ泣いていた。
お互いの気持ちの噛み合わないもどかしさをこえて、「仲間」の別れを、ただ悲しんでいた。
「そろそろ、行かなきゃ。」
「圭一、元気でね。」
「向こうで彼女作ったら報告しろよ?」
「もちろん。明莉なんかより、もっといい女見つけてやるぜ!」
「そんなの無理無理!」
あははは、と笑って、俺たちは最後の時間を過ごす。
「じゃ、行くわ。」
「うん、またね圭一。」
「おう、明莉も元気でな。」
「圭一、色々ごめんな。」
「謝るのは俺の方だ。お前にはつらい思いさせた。本当ごめん。でもこうして明莉と最後に会えて、やっぱよかった。お前、本当最高の友達だよ。」
「ちょっと、二人でコソコソとなに話してんのよ?」
「男同士の話。じゃあなお前ら!!またどっかで会おう!」
「うん、バイバーイ!」
「またなーー!」
圭一を乗せた飛行機が飛んでいく。
俺たちは寂しさに胸をいっぱいにしながら、見送った。俺はつぶやく。
「やっぱり、寂しいな。」
「うん……。」
「明莉、来てくれてありがとな。」
「………圭一はやっぱり仲間よ。」
「そうだよな。本当、ごめん。」
「もーー、いいって!忘れるって言ったでしょ!」
「でも……」
そのとき、明莉は俺の唇に自分の唇を触れさせた。
「ほら、帰ろ、隆太!」
「………お、おお!」
これから何が起こるかなんて分からないけれど。
大きな困難を乗り越えた俺たちなら、どんなことも乗り越えていける。そんな気がした。
空は、雲一つなく、透き通るほど綺麗な青色に染まっていた。