報告-7
「はっきり言うとね、修は桃子のことが好きだと思う」
郁美は私に添えていた手をそっと離して私の横に座り直した。
郁美まで沙織と同じようなことを言うとは思わなくて、少し驚いたけれど、私はすぐさま、
「……それはないよ」
と、首を横に振った。
郁美はモールでのたった数分間のやり取りしか見ていないのにそう決めつけるのは、短絡的過ぎなんだ。
今まで私を好きになってくれる男の子なんて、一人もいなかった。
そんな私が、自分の好きな人に好きになってもらえることは、奇跡に近いことなのだ。
「……だから修の本当の気持ちを知りたいの。お願い、今から修に会いに行って」
「……明日から学校始まるし、明日じゃダメなの? ネックレス返すのは」
私はため息をついて、両手を合わせている郁美を見た。
郁美はこうと決めたら突っ走る所があるけど、だからって今からって言うのは少し無理がある。
「だって、学校始まるときっと桃子のことだから、“忙しかった”とか“話す隙がなかった”とか言い訳するでしょ?」
ギクッと身体が固まった。
意外と郁美も鋭い所がある。
でも、私には明日告白するという本来の目的があるんだ。
郁美と土橋くんの別れ話を聞いて、告白するかどうかは心が大きく揺れているけど。
でも、これも郁美に報告するチャンスかもしれない。
私は小さく息を吸い込み、ゆっくり口を開いた。
「実はさっき言いたかったことなんだけど……、明日私は土橋くんに告白してキッパリ振られるつもりだったんだ。それで、今度こそ自分の気持ちにケリをつけようと思ってた。だから、そのときに土橋くんにネックレス返すよ」
そう言うと、なんとも気まずい沈黙が私を包んだ。
やはり別れたとはいえ、自分の好きな人に別の女が告白するのはいい気持ちがしないかもしれない。
生唾をゴクッと飲み込む音が、静かな部屋に響いたような気がした。